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視えないものと視えすぎるもの――距離の物語
本作は、人間の「気」が見えるという特異な感覚を持つ、人嫌いのソーヤが主人公です。彼は同居猫マーゴと静かに暮らしていましたが、ある日マーゴと同じ「痛くない気」を持つ大学生・陸と出会います。ここで特筆すべきは、ソーヤが陸に感じる感覚の仕組みです。
ソーヤにとって人間は、雑多で不快な「気」を発する存在。ところが陸だけは別で、それが猫と同質であるという点が絶妙な伏線として機能するのでしょう。恋愛未満と謳われていますが、この「特別な感覚の共有」がどう距離を縮めるのか、構造的に気になるのです。
Q. ソーヤの同居猫マーゴは、どのような位置づけの存在ですか?
A. マーゴはソーヤと同居している猫です。最も重要なのは、ソーヤが人間の「気」を見分ける基準として、マーゴの「気」が登場することでしょう。マーゴの放つ「痛くない気」は、ソーヤにとって心地よいものとして描かれています。そして、陸が偶然にもマーゴと同じ種類の「気」を持っていることが物語の起点となります。マーゴは単なるペットではなく、ソーヤの世界認識の基準となる存在と言えるでしょう。
Q. ソーヤは、陸に対してどのように反応しますか?
A. あらすじからは、ソーヤは人嫌いでありながら、陸と「少しずつ距離を縮めてゆく」ことが示されています。これはソーヤにとって大きな変化です。陸が持つ「痛くない気」が、ソーヤの警戒心を解く鍵になるのでしょう。おそらくソーヤは、陸に対して混乱と好奇心と安堵が混ざった複雑な感情を抱くはずです。もともと人間関係を避けていたソーヤにとって、陸という特異な存在は、自らの感受性と向き合う契機になるのではないでしょうか。
Q. 連作短編集ですが、個々の作品はどのように繋がっていますか?
A. 本作はweb発表分を加筆修正し、二篇の書き下ろしを加えた連作短編集です。「桃色プリン」「チョコミントアイス」「かぼちゃ大王」「キャラメル・フラペチーノ」「りんごヨーグルト」という5篇に加え、書き下ろしとして「図書館わらし」が収録されています。これらはすべて、ソーヤと陸の交流を描く一連の物語であると推測できます。各タイトルが示すように、日常の小さな出来事や食べ物にまつわるエピソードが、二人の関係性の変化を象徴的に映し出す構成なのでしょう。
