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「先輩」と呼ぶ九歳下の鷹匠と、革を納める年上の革細工師
本作は、鷹匠と革細工師という職人の関係を軸にしたTL小説です。ヒロインの国東蕗は三十六歳の革細工師で、父の代から同じ鷹部屋に足緒と手套を納めてきました。八年前、十九歳で弟子に入った黒岩柾に、砂の替えどきから水浴びの順まで鷹部屋の決まりを先に教えたのは蕗自身。それから八年経った今も、柾は蕗を「先輩」と呼びます。前の鷹匠が手を引き、柾は鷹と鷹部屋をそのまま引き継いでいます。
物語の入口は、据え替えの季節に合わせた足緒と手套の作り直し。採寸のため、蕗は夕暮れの鷹部屋へ通うことになります。柾が鷹を宥めるとき、足緒を指に巻いて張り、鷹が落ち着いたところで緩める——その往復を、蕗は何度も横から見ている。職人として寸法に妥協しない蕗と、声は低く短いが緩めるときの指先だけは優しい柾。年の差も立場も、二人とも成人して久しい社会人です。
鷹の足緒を巻く手つきが、そのまま蕗へ向く
ある夕方、鷹を止まり木に戻した柾は、空いた手の指に革紐を巻き直しながら「この指に巻きつけていいですか」と言います。これは鷹の足緒に使う手つきと同じもの。強く引けば暴れ、緩めれば飛ぶ——その加減を、柾は蕗にも向けてくる。蕗は答えずに、自分が仕立てた手套を柾の手に着けさせ、その手を自分の腰へ置かせます。止まり木の下の砂に膝をついた晩から、据え替えが終わるまで、蕗は通い続けることになります。
最後の採寸の日、腕に残るのは巻き取られたままの一本の足緒。職人として革を仕立ててきた蕗が、自分の間合いだけは測り損なっていく過程が、鷹部屋という閉じた場所の空気とともに描かれます。全六十ページのR18作品です。
こんな読者に刺さりそう
- 年の差のある関係で、教えた側と教えられた側の立場が静かに揺れる瞬間を読みたい方
- 鷹匠・革細工師といった職人の手仕事と、その手つきが関係性に重なる描写を味わいたい方
- 言葉少なめの年下が、行動で間合いを詰めてくる構図が好きな方
「先輩」という呼び方が八年間ずっと続いてきた二人だからこそ、その呼称が残ったまま関係だけが変わる瞬間に、独特の緊張が生まれます。夕暮れの鷹部屋という舞台、革と足緒という道具立て、そして最後まで腕に残る一本の足緒。職人の手つきと距離感を丁寧に追いたい方に向いた一作です。
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