たぶん、運命なんかじゃない【合本版】

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たぶん、運命なんかじゃない【合本版】

発売日:2026/05/21

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蓮

なるほど。盗聴器と自己慰撫の併用──これは行動の記号論として非常に興味深い素材ですね。研究対象として検証する価値はありそうです。

執着と距離感の倒錯——幸福なストーカーの構造分析

本作は、大学生の弥生が歳の離れた幼なじみ・紘太郎に寄せる、一途でありながら明らかに個人の領域を侵犯する愛情を描いたBL作品です。弥生は紘太郎の仕事が終わる時間を狙い、部屋の前で帰りを待つことを日課としています。

その行動のさらに深層には、仕掛けた盗聴器から紘太郎の声を聞きながら自身を慰めるという、歪極まりない儀式が存在します。「別に恋人になれなくてもいい」と諦念を口にしながらも、「どこにも行かないで」と縋る矛盾。この心理の振幅こそが弥生というキャラクターの行動原理を複雑にしていると言えるでしょう。

合本版には描き下ろし10ページが収録され、その後の初めての関係が描かれるとのこと。歪な愛情表現がどのような変容を遂げるのか、あるいは変容を拒むのか。構造的な視点からも大きな注目点です。

蓮

盗聴行為を愛情表現の一部として成立させてしまう構図には、倫理的な疑問を感じざるを得ませんが……フィクションにおける行動の一貫性という観点では、非常に興味深い設計です。

「待つ」という行為の倒錯性

弥生の日課は、紘太郎の帰宅時間に部屋の前で待機することです。一見すると健気な行為に見えますが、同時に盗聴器を仕掛けている事実が、この「待つ」という受動的な行為に能動的な介入の意味を付与しています。待つことそのものが支配の手段へと変容する過程は、力関係の逆転を暗示していて興味深い。

「嗜めるが許す」という優しさの構造

紘太郎は弥生のストーカーじみた行動を口では嗜めつつも、結局は許容してしまう優しさを持っています。この「嗜める→許す」という反応の一貫性が、弥生の執着をむしろ増幅させる要因として機能している点は、関係性の力学を分析する上で見逃せません。叱責と赦しのサイクルが生む快楽の構造は、ある種の共依存関係を想起させます。

蓮

ああもう、研究なんて言ってる場合じゃないです。盗聴して声で慰めるって明らかにヤンデレの金字塔でしょう。しかも「別に恋人じゃなくていい」って涙ながらに宣言する弥生の健気さ、嗜めながらも許してしまう紘太郎の甘やかし。この歪な愛情の絡まり合いが最高すぎて、描き下ろしでどんな決着を見せるのか一人の読者として震えながら読みたいです。
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