させば成る

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させば成る

発売日:2026/05/25

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葵

読み終えた後も、盤面の余韻がじんわりと胸に残って離れないんです。将棋の一手一手みたいに、少しずつ関係が深まっていく感じが、もうたまらなくて。

盤上の青春が描く、運命の一手と恋の始まり

「させば成る」は、将棋にすべてを捧げる高校生・鳴斗と、プロ目前の奨励会員でありながらどこか冷めた同級生・行成が出会う物語です。幼い頃から家事に追われ、将棋だけが唯一の楽しみだった鳴斗は、人との対局を求めて道場へ足を踏み入れます。そこで出会った行成との実力差は明白ですが、それでも「ハンデなし」を願い出る鳴斗の姿に、盤上だけでなく人生そのものへと踏み込む覚悟が感じられます。

作者は、将棋という競技を通じて、二人の心情や距離感を丁寧に描き出しています。対局の一手一手が、単なる勝負を超えて、互いへの理解や信頼へと繋がっていく過程は、まるで恋の駆け引きのよう。盤上で交わされる視線や仕草の一つ一つに、静かな熱が宿っており、読むほどにジワジワと心に響いてきます。青春ものとしての爽やかさと、将棋の勝負に賭ける真剣さが絶妙に混ざり合い、物語に奥行きを与えています。

葵

二人の距離が、対局を重ねるごとに縮まっていく瞬間が、本当に愛おしいんです。特に“ハンデなし”の申し出には、鳴斗の将棋への真摯な気持ちが溢れていて。

キャラクターの魅力と関係性

主人公の鳴斗は、将棋に対する一途な想いが全身から伝わってくるキャラクターです。家事に追われながらも、将棋だけは手放せないという彼の姿は、どこか哀愁を帯びつつも、強い意志を感じさせます。その一方で、行成はプロ目前の実力を持ちながら、どこか冷めた目で盤上に向き合う存在。この対照的な二人が、対局を通じて互いの本質に触れていく様子は、読者の心を掴んで離しません。

関係性の変化は、将棋の一手一手に如実に表れています。初めは実力差だけが際立っていた対局が、やがて互いを認め合うことから生まれる緊張感へと変わっていきます。特に、行成が鳴斗の「ハンデなし」の申し出を意外にも受け入れるシーンは、彼の中に眠る何かが動き出す瞬間であり、二人の距離が縮まる重要な転機です。こうした関係性の描写が、単なる青春ドラマを超えた深みを与えています。

葵

やっぱり、この作者さんは“わかってる”んですよね。キャラの立ち方や関係性の描写が、本当に秀逸で。特に鳴斗の一途さには、何度も胸が詰まりました。

「ハンデなし」に込められたプライドと信頼

鳴斗が自ら「ハンデなし」を願い出るシーンは、作品の中でも特に印象的です。実力差を理解した上でのこの申し出は、単なる無謀さではなく、将棋に対する真摯な姿勢と、相手へのリスペクトから生まれたものです。行成がそれを承諾する瞬間、二人の間には盤上を超えた信頼が生まれます。この約束が、後の関係性にどう影響するのかが、物語の大きな見どころの一つとなっています。

将棋に生きる少年の孤独と情熱

鳴斗の背景には、幼い頃から家事に追われ、将棋だけが楽しみだったという孤独があります。しかし、だからこそ彼の将棋への情熱は、他の誰よりも純粋で強いものになっています。道場で初めて出会った行成との対局は、彼にとって初めての「本気の相手」との出会いでもあるでしょう。その熱が、盤上だけでなく、行成の心までも動かしていく過程は、読者に強い感情移入を促します。

葵

この作品は、将棋を知らなくても誰もが共感できる、青春の熱さと切なさが詰まっています。鳴斗が将棋を指すたびに彼の心が盤上に現れて、行成の冷めた瞳が次第に熱を帯びていく。そんな二人の変化を、ぜひ最後まで見届けてほしい。私は、この作品に出会えて本当に良かったです。まさに“運命の一手”ですね。
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