fragile

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fragile

発売日: 2026/06/19 | 著者: 冬木真魚

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紫苑

『fragile』──そのタイトルが示す脆さのなかに、確かな強さが潜んでいる。同人誌発のこの作品は、言葉にならない感情の機微を拾い上げる秀作だ。

静寂の中で響く、その一言

あらすじは、同じ高校に通う二人の少年の出会いから始まる。有吉瑞穂は裕福な家庭で何不自由なく育てられ、いわゆる「勝ち組」のレールの上を歩んできた。

一方の伊豆航平は複雑な家庭環境ゆえに学校でも問題児扱いされ、周囲から距離を置かれる存在だ。そんな二人が二年生で同じクラスになることで、物語は動き出す。

価値観も育った環境も異なる彼らは、当然のように戸惑いや反発を覚える。しかし、その反発こそがお互いを強く意識させるきっかけとなり、次第に惹かれあってゆく。

表題作「fragile」に加え、続編「君の名前」、書き下ろし「君の背中」「蜃気楼」の全四編が収録されており、時間軸を追って二人の関係性が深まる様子を追体験できる構成だ。

紫苑

航平の強引な口付けに込められた独占欲と、瑞穂の内に秘めた想い。二人の距離が縮まるたび、胸が締め付けられる。

対照的な二人が織りなす引力

有吉瑞穂は、外から見れば恵まれた環境にあるが、その内面には「何不自由ないこと」への空虚さや、自分らしさを見失いかけているもどかしさがあるように感じられる。

対する伊豆航平は、問題児というレッテルとは裏腹に、自分の感情にまっすぐで、瑞穂に対しては激しい口付けという形で衝動をぶつける。その強引さが瑞穂の閉じた殻を破っていく。

二人の関係性は、単なる恋愛ではなく、互いの存在が自分という人間を再定義させるような、依存とも共鳴ともつかない独特の引力で結ばれている。価値観の違いが反発を生み、その反発がさらに深い理解へとつながっていくプロセスが丁寧に描かれている。

特に、あらすじにある「他にだれもいない小さな世界で、ただお互いの存在だけを確かめ合った」という一文が象徴するように、外部の視線や社会の枠組みをしばし忘れ、二人だけの時空間が構築される瞬間の描写に、筆者の文章力が光る。

Q. 本作「fragile」はどのような形態で出版された作品ですか?

A. 本作は冬木真魚の個人誌作品の電子書籍版です。2021年5月15日に電子書籍として初出されています。

Q. 収録作品は表題作と続編以外に何が含まれていますか?

A. 表題作「fragile」、続編「君の名前」に加え、書き下ろしの「君の背中」と「蜃気楼」の全4編が収録されています。

Q. 二人の主人公はどのように出会い、関係を築いていきますか?

A. 同じ高校の二年生で同じクラスになった有吉瑞穂と伊豆航平。裕福な家庭で育った瑞穂と複雑な家庭環境で問題児扱いされる航平は、価値観の違いから戸惑いや反発を覚えながらも、次第に惹かれあっていきます。

紫苑

収録された四作品を通して、二人の関係性が螺旋状に深まっていく構成は見事。作者は決して説明過多にならず、行間で語らせる筆致で読者を惹きつける。特に書き下ろしで描かれる微かな変化に、長く噛みしめたくなる余韻がある。同人ならではの解釈の深さが、電子書籍という形で多くの読者に届いたことを嬉しく思う。
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