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📝 DLsite TL小説
箔打ち場で交わされる、槌と息だけの十年
本作は、町の看板屋の二代目・小手川ちぐさ(30歳)と、箔打ち職人・荘司右近(36歳)の関係を描くTL小説です。ちぐさは文字に箔を押す仕事をしており、二十のときから十年、箔を右近の打ち場から分けてもらってきました。そんな折、いつもより多い箔が必要な一枚板の看板を任され、右近のもとを訪ねます。そこで告げられる「一枚も欠けずに揚がるまで」という言葉が、物語の軸になります。
「動くな、喋るな」——打ち場という密室
打ち場では動くことも喋ることも許されず、ちぐさは壁際の座布に座って息を浅くしているしかありません。槌が三つ鳴って止まる、そのあいだに声だけが一つ置かれる。匂いが先に部屋を埋めているのに、ちぐさはまだ座ってもいない——冒頭のこの描写から、打ち場の緊張感が伝わってきます。紙の束は毎日少しずつ厚みを増し、その厚みだけで何日経ったかが分かるようになる。時間の経過を、箔を挟む紙の束で数えていく構成が印象的です。
十年ぶんの箔が、息の形のまま残っていた
側棚の束を引き出したちぐさは、そこで息が止まります。十年ぶん、自分の息で飛んだ箔が、飛んだ形のまま一枚ずつ紙に挟まれ、日付まで入っていたのです。どの日に何を言いかけたのかまで、形で残っている。この発見は、右近が十年間ちぐさの息の一つひとつを記録し続けてきたことを意味します。あらすじで示される「挟まれていた」という表現は、箔が紙に挟まれていたという事実と、ちぐさ自身が打ち場に留め置かれる状況の両方に響く作りになっています。
声を我慢する夜と、槌を借りる朝
動くなと言われ、声も出せないまま、打ち石の脇でも座布の上でも毎晩——という展開が示唆されます。声我慢・イキ我慢といった要素が並ぶのは、打ち場の「静けさ」を守るという制約が、そのまま二人の時間の緊張感になっているためでしょう。そして打ち上がった朝、ちぐさは槌を借り、自分で一枚を揚げて右近の槌の柄に押します。金が乗った柄を見た右近の短い一言が、この物語の締めくくりとして用意されています。
こんな人におすすめ
- 年上の職人と、十年越しの関係性をじっくり味わいたい方
- 静かな密室で、声を殺す我慢の空気にときめきたい方
- 執着や溺愛を、職人の仕事ぶりと重ねて読みたい方
- 最後にヒロインが自分の手で一歩を踏み出す展開が好きな方
全63ページのTL小説で、登場人物は18歳以上の成人のみ。箔打ち場という独特の舞台と、十年という時間の重みが交差する作品です。R18作品のため、購入・閲覧は18歳以上の方に限られます。
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