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兄の死と、残された部屋と、合鍵を持つ男
『兄の代わりに、俺がハメられた』は、亡くなった兄のワンルームを片付けに来たジョンウの前に、合鍵を手にした男が現れるところから始まる物語です。男の名はソ・ガンジン。ペンキ職人で、兄の六年来の恋人だったと告げます。口数が少なく、何を訊いても「うん」としか答えない。そんな男と二人、知らなかった兄の暮らしを箱に詰めていく——という導入が公開あらすじで示されています。
本作を他と分けるのは、喪失の場であるはずの部屋が、そのまま二人の距離が詰まる場所になっている点です。兄を悼む時間と、兄を介してしか知らなかった男と向き合う時間が、同じ部屋で重なっていきます。短編・73ページのPDF作品として、この濃い関係性を一気に読む形になっています。
「見ていたのは兄じゃなくて俺」——すれ違う視線の構図
あらすじで強く印象に残るのは、「あの男が最初から見ていたのは、兄ではなく自分だった」という一文です。ジョンウは片付けの最中にそのことに気づいてしまいます。つまり、兄の恋人という関係で現れた男の視線が、実は最初からジョンウ自身に向いていた、という構図が提示されています。
ここで注意したいのは、これが兄を奪う話でも、兄を忘れる話でもなさそうだという点です。六年来の恋人という事実は消えません。喪失の上に、別の感情が重なっていく。その重さをどう受け取るかが、この作品の読みどころになりそうです。
喪失と執着が絡み合う、大人のためのBLロマンス
作品は「喪失と執着が絡み合う、大人のためのBLロマンス」と紹介されています。死別という取り返しのつかない出来事を軸に置きながら、執着という感情がそこに絡む。静かな口数の少ない男が、何を考えているのか読者にも見えにくいまま物語が進む構成がうかがえます。
ガンジンの「うん」しか返さない寡黙さは、感情がないのではなく、言葉にしない何かを抱えているように読めます。ジョンウが兄の知らなかった顔に触れていく過程で、その沈黙の意味が変わっていくのかもしれません。
こんな読者に届きそう
- 死別や喪失を抱えた関係性を、重さごと読みたい方
- 寡黙な相手の内側が少しずつ見えてくる構図が好きな方
- 静かな空気の中で感情が動く短編を、一気に読みたい方
韓国語原作の日本語版で、著者はHanip、発行はヌギブックス。表紙画像は生成AIで作成され、本文の一部および翻訳にAIの支援を受けていることが明記されています。短編として、重い導入からどう着地するのかを見届ける読み方ができそうです。
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