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肩書きが終わる午前零時、七年分の本音が解き放たれる
「最後の残業〜退職届を出した夜、社長が初めて私を名前で呼んだ〜」は、齋藤あいり先生によるTL読み切り短編です。七年間、秘書として尽くしてきた雨宮紗和が、婚約を理由に退職届を提出。最終勤務日の夜、社員が誰もいなくなった社長室で、時計が午前零時を過ぎた瞬間から物語が動き始めます。
これまで彼が彼女を呼んだのは「君」か「雨宮」だけ。それが退職届を受理した途端、初めて名前で呼ばれるという衝撃的な幕開けです。「明日から君は、私の秘書ではない。そして私は、もう君の上司ではない」という言葉から、肩書きの枷が外れた二人の関係が一夜限りで大きく変わっていく様子が描かれています。
七年間、彼は何も見ていないと思われていたのに、実際にはアールグレイはミルク多めであること、雨の日の頭痛、金曜だけ下ろす髪——すべてを覚えていたという設定に、胸が熱くなります。上司と秘書という立場から、ついに素の自分たちで向き合う瞬間が、この作品の最大の魅力と言えるでしょう。
無口な社長と献身的な秘書、七年間のすれ違いが一夜で変わる
主人公の紗和は、七年間ひたむきに社長を支えてきた秘書です。何も言われないまま日々を過ごし、退職を決意するまで彼の本当の気持ちを知りませんでした。一方、社長は表面上は命令口調で距離を保ちながら、内心では彼女の些細な習慣まですべて記憶しているという、かなりの執着型。口に出せなかった想いが、肩書きが外れた途端にあふれ出します。
「帰るなら、送る」という彼の言葉に「……帰らなかったら?」と返す紗和。その後の「七年間言えなかったことを、全部言う」というセリフに、これまでの沈黙の重さと、ようやく解放される期待が詰まっています。命令しかできなかった男が「頼む」と乞う姿は、まさに溺愛要素の真骨頂。
また、濃厚な描写を中心に据えた一夜の物語とあるように、退職届を受理した午前零時から始まる時間が、二人の関係を再定義する重要なターニングポイントになります。七年間の積み重ねが一気に迸るような展開に、読者は息をするのも忘れるでしょう。
七年分の想いが詰まった、胸を打つセリフ
この引用には、作中で最も重要な転換が凝縮されています。これまで社長は紗和に対して命令口調で接してきました。それが退職届を受理した瞬間、初めて名前を呼び「命令ではない」と告げる。この一言で、上司と部下という関係性が完全に崩れ、一人の男と一人の女として向き合うことが宣言されるのです。
また、このセリフは単なるロマンチックな言葉ではなく、七年間の葛藤と決断の重みを背負っています。命令しか知らなかった男が、初めて「頼む」と乞うまでに至る心理描写が、この一言に集約されていると言えるでしょう。読者はこの文章を目にした瞬間、社長がどれだけ紗和を想っていたか、そしてそれがなぜ今まで言えなかったのか、想像せずにはいられません。
さらに、この後「明日から君は、私の秘書ではない。そして私は、もう君の上司ではない」と続く流れが、日本的な「肩書きが終わる午前零時」という時間設定と相まって、非常にドラマチックです。仕事の関係が終わることで初めて芽生える恋愛——そんな背徳感と開放感が同居した空気感が、TL読者の心を鷲掴みにします。
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