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オフィスラブの表と裏を揺さぶる、夜の始まり方
本作『このふたり、溺愛沼。ワケあり上司の色気に酔う夜【合本版】』は、社内で人気No.1の朝比奈に惹かれる夜野の視点で進んでいく。彼女にとって彼は、手の届かない憧れの人であるはずだった。けれどある日、女性社員同士で交わされる朝比奈のHな噂話が、彼女を彼の射程圏内へと引きずり込んでしまう。シリーズ第21話から第25話までを収録した本作は、恋愛の一歩手前にある駆け引きをたっぷり味わえる構成だ。
「俺のSEX、気になる?」という軽口は、野次馬根性をくすぐられるようでいて、実際に試すための入口だ。壁ドンからのキスされそうになる瞬間、帰り道で出会う酔ったお姉さん。日常の延長線にある出来事が、夜野の知らない舌先の熱へと連なっていく。現実のOLたちの「あるある」だと思えるほど自然に流れ込むところが、この作品のリアリティラインを支えている。
本作はTL漫画として、身体的な触れ合い以上に「関係性の揺らぎ」を描いている。表面上は軽やかなセクハラまがいのやり取りに見えて、その裏側には2人の間で交差する視線や躊躇いがしっかりと描かれている。酔ったお姉さんによる押し倒しも、帰り道という日常の隙間に突然訪れる非日常として配置されていて、場面展開の緩急が読者の目を離させない。
「オレにちょうだい?」――心の距離を埋める、強引で優しい言葉
この短い一文に、相手の強い執着が凝縮されている。夜野の「はじめて」を欲しがる言い回しは、彼女をただの同僚ではなく、自分が最初に触れたい相手として見ている証拠だ。噂話の対象だった朝比奈から、突然真正面から欲望を向けられて、夜野はもちろん、読者の方まで息をのんでしまう。
「オレにちょうだい」という言葉は、命令しているようで、実は相手の同意を待っている。けれどその待ち方には「どうせ拒めない」という自信がにじむ。朝比奈は夜野の返事を待つ間も、視線で逃げ道を塞ぐように近づいてくる。この一件だけで、彼の色気が単なる容姿やテクニックではなく、言葉の選び方から生まれているとわかる。
