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捨てられることに慣れてしまった者の、愛への渇き
本作は、不吉と蔑まれる黒猫の獣人・ミカと、侯爵家の三男でありながら豪商として財を成したライハルトの純愛物語だ。冒頭、ミカは恋人だった男爵令息に裏切られ、謂れのない罪で屋敷を追われる。身も心も弱り、黒猫の姿で森を彷徨う彼を拾ったのがライハルトだった。
しかしライハルトは、ミカをただの黒猫だと勘違いしている。人嫌いな彼が「俺が拾ったんだから俺のものだ」と自然に所有権を主張する様子には、まだ恋愛感情のかけらもない。けれど、その無自覚な執着が、少しずつ形を変えていくのだろう。
「愛する人にはいつだって捨てられる運命」というタイトルが示す通り、ミカは運命に抗うことを諦めている。そんな彼が、人間の姿でいるときも事あるごとにちょっかいをかけてくるライハルトに、どう心を開いていくのか。その過程に、この作品の熱が詰まっていると感じる。
「捨てる側」と「捨てられる側」が、ゆっくり近づいていく
ミカは、愛した人に裏切られ続けてきた孤独な青年だ。不吉と言われる黒猫の獣人である彼は、「どうせまた捨てられる」と思いながら、それでも誰かに愛されたいと渇望している。その健気さが、読者の庇護欲を刺激する。
一方のライハルトは、侯爵家の三男でありながら豪商として成功した異色の存在だ。「人嫌い」と評される彼がなぜミカを拾ったのか。そこには明確な理由が描かれていないからこそ、彼の本心が気になる。猫だと思っているから拾ったのか、それとも無意識のうちにミカの何かを感じ取ったのか。
面白いのは、ミカが人間の姿でいるときにライハルトが「なぜかいつも楽しそう」という点だ。言い返されることを喜んでいるかのような彼の態度は、人嫌いという印象とは裏腹だ。二人の関係は「主従」でも「対等」でもなく、互いの認識が噛み合わないまま、少しずつ愛情を育んでいく。
「お前はいつまでも美しい」──永遠を約束する言葉の重さ
この一文は、あらすじの冒頭に置かれている。つまり、この言葉が物語全体の核になることを示唆しているのだ。誰かに「いつまでも美しい」と告げられることは、「あなたを永遠に愛し続ける」と宣言されることに等しい。
しかし、捨てられることに慣れてしまったミカにとって、「いつまでも」という言葉は、むしろ恐怖に感じられるかもしれない。だって、これまで愛した人は、みんな彼を捨ててきたのだから。この言葉が、ミカにとって祝福になるのか、それとも新たな裏切りの前触れになるのか。その緊張感が、物語を最後まで読ませる力になっている。
愛を知らない二人が愛を知る──というあらすじの言葉通り、この作品は「愛されることが怖い」人間と「愛し方がわからない」人間が、少しずつ互いの距離を縮めていく物語だ。その過程で、この「綺麗だな」という言葉がどう反響していくのか、じっくり味わいたい。
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