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護られる関係から、奪う関係へ——聖女と騎士の恋の始まり方
幼い頃から育ての親として、騎士として、オーロラを守り続けてきたフェリクス。その献身的な愛情は、オーロラにとっては密かな恋心へと育っていた。しかし、その想いは「報われない」と自覚し、彼女は聖女としてのお見合いという形で、自分の恋に区切りを付けようとする。
ところが、その場に乱入してきたのは、他でもないフェリクス本人。「オーロラの夫には、すべてにおいて俺より上の男しか認めねぇから」——そう言い放ち、あっという間にお見合い相手の男たちをなぎ払ってしまう。国一番の美男子で、剣も魔法も最強の彼に「上の男」など存在するはずもなく、結果的にオーロラの新しい出会いは、騎士によって完全に封鎖されてしまった。
この作品の核にあるのは、保護者としての愛情と、異性としての恋心の境界線があいまいになっていく過程だ。フェリクスは「娘として守る」と言いながら、その行動は明らかに所有欲に満ちている。一方のオーロラも、報われないと知りながらも、彼の強引さに心を揺らさずにはいられない。守られるだけだった関係が、互いの感情を自覚することで、どう変化していくのか——その予感だけで冒頭から心を持っていかれる。
無自覚な執着と、恋に落ちる瞬間
フェリクスは、オーロラにとって「育ての親」であり「騎士」であり、そして「密かな恋の相手」。彼は彼女を娘として大切に守り続けてきたが、その感情が単なる保護欲ではないことに、お見合いという場面でようやく気づき始める。自分の知らない場所で、自分の知らない男たちと結婚の話を進められている——その事実が、彼の何かを揺さぶったのだ。
一方オーロラもまた、フェリクスへの想いに区切りを付けるために、新しい恋を探そうとしている。しかし、目の前でお見合い相手を蹴散らす彼の姿を見てしまえば、冷静な判断などできるはずもない。彼女は「新たな恋を探す」と決めたのに、その邪魔をされても、心のどこかで嬉しいと思っている自分に気づいてしまうだろう。
この二人の関係性の魅力は、長年積み重ねてきた信頼と、そこに突然芽生えた恋心の狭間で揺れること。フェリクスの「自分より上の男なんて存在しない」という圧倒的な自信は、彼がどれほどオーロラを特別視しているかの証明でもある。親代わりであり、最強の騎士であり、そして今まさに恋に落ちかけている男。彼の感情の変化を追うだけで、この物語は成立している。
「俺より上の男」という、彼女を誰にも渡さない理由
この台詞、一見すると「自分より優秀な男なら結婚を許す」という寛容な条件のように聞こえる。しかし、国一番の美男子で剣も魔法も最強のフェリクスにとって、自分より上の男が存在する可能性はほぼゼロに等しい。つまり、この発言は「俺以外の男は誰も認めない」という究極の独占欲を、本人も気づかないうちに宣言してしまっているのだ。
しかも彼は、この言葉をただ口にしただけでなく、実際にお見合い相手の男たちを「あっという間に」なぎ払っている。条件を提示してから、その条件を満たす男が現れるのを待つ——そんな合理的な思考ではなく、まず目の前の男たちを排除するという行動が、彼の感情の本音を物語っている。彼はまだ自分の気持ちを自覚していないかもしれない。それでも、オーロラを他の男に渡したくないという本能が、彼を暴走させているのだ。
この一文が刺さるのは、無自覚な執着ほど重いものはないからだ。彼の言葉と行動が、オーロラへの強い想いを裏切る形で表現している。この後の展開で、フェリクスが自分の感情に気づいたとき、それまでの「娘として」の態度がどう変化していくのか。その分岐点を、この台詞が予感させている。
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