🎧 らぶカル BLボイス
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「10年目」という数字が、この作品のいちばん静かな爆弾
本作は、元不良で天邪鬼な紡希と、学校始まって以来の秀才と呼ばれた謙太郎の10年にわたる片思いを描いたBLボイスドラマです。告白され続けて10年。勝手に同じマンションに引っ越してくる。毎日のように付き合ってほしいと言われ続ける。あらすじだけを読むと、どこかコメディめいた執着譚に見えます。
けれど、紡希の紹介文に「恋愛なんて興味を持ったことすらなかった」とある点が、この作品の重心を静かに変えます。恋愛未経験の28歳。血の気が多く、すぐ喧嘩になる。その硬質な外殻の内側に、10年分の「拒否し続けた時間」が堆積しているわけです。拒否は拒否であるほど、相手を意識し続けた時間の裏返しでもある。ここが構造的にとてもおいしい。
一方の謙太郎は、振られまくっても「それすらも楽しんでいる様子」と紹介されています。穏やかで優しく柔和な性格なのに、紡希のことになると周囲が見えなくなる。紡希のためなら自分の何を犠牲にしてもいいと思っている。この二面性が、単なる追いかけっこを一途な執着へと格上げしています。Track2「大雨の夜」で体調を崩した紡希が助けられる展開は、10年分の距離が崩れる最初の亀裂として配置されているのでしょう。
「勝手に同じマンションに引っ越してくる」という一文に宿る執念
この一文、冷静に読むと相当なものです。同じマンションへの引っ越しは、相手の同意なしに生活圏を侵食する行為です。それを「勝手に」の一言で流している紡希の語り口は、怒りというより諦念に近い。けれど諦めが成立するのは、その侵食が10年続いて、すでに生活の前提になってしまっているからです。
そして「ウンザリしていたのだが…」の接続詞。ここで読者は、この後に何かが変わるのだと予感します。あらすじの時点で、紡希の語りが「ウンザリ」で終わらず、助けられた雨の日へと接続されている。拒絶の言語で語りながら、その拒絶が崩れる瞬間を自ら差し出している。天邪鬼という性格設定が、語りの構造そのものに組み込まれている点が、とても丁寧だと感じます。




