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歯科技工士の指先に、20年分の想いが宿る
亡き父の後を継ぎ、若くして歯科医院の院長となった笹々谷光琉。真面目な性格ゆえにプレッシャーと責任感に押しつぶされそうになる日々。そんな彼をいつも支えてきたのが、腕利きの歯科技工士となった幼馴染の親友・国竹象真です。
笹々谷はいつからか、国竹の仕事場で作業の音を聞きながら無防備にうたた寝するようになります。穏やかに寝息を立てる笹々谷を、国竹は愛おしげに見つめている。けれど笹々谷は、その視線の意味に気づかない。幼馴染という安全な距離のまま、国竹の想いだけが静かに積み重なっていく構図です。
歯科技工士という職業が、この作品の核心に触れています。歯の型を取る、削る、磨く。相手の口内に指を入れる仕事。患者と術者という関係のなかで、触れることと触れられることが日常に溶け込んでいる。その指先が、幼馴染に向けられた瞬間に何が起きるのか。20年という時間の重さが、触れた瞬間から溢れ出す設計になっています。描きおろしでは後日談の初エッチ編も収録。ここまで積み上げた関係性が、ようやく形になる瞬間が用意されているわけです。
「知らぬまま」の一言が、すべてを物語っている
この一文が、作品全体の緊張感を一文で成立させています。「知らぬまま」という言葉が示すのは、受けの無自覚と、攻めの一方的な想いの非対称性です。国竹は笹々谷が無防備に眠る姿を、どれだけの時間、どんな顔で見つめてきたのか。あらすじにはその感情の内実は書かれていません。けれど「愛おしく見つめる」という描写だけで、その視線の温度は十分に伝わります。
幼馴染という関係は、近すぎて恋愛感情に気づかないという構造を自然に生みます。笹々谷にとって国竹は「いつも助けてくれる親友」。国竹にとって笹々谷は、それ以上の何か。この認識のズレが、20年という歳月でどれほど深くなっているか。触れた瞬間から溢れ出す、という表現があらすじにある通り、感情が堰を切る瞬間がこの作品のクライマックスなのでしょう。無自覚だった受けが、攻めの執着の深さを理解したとき、何を思うのか。そこに解像度の高さを期待しています。




