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丁寧語のまま逃げ場を塞ぐ、年上の会頭と仕立て屋の関係
本作は、町の仕立て屋・環と、店に貸しを貸している服飾商会の会頭・巽の関係を描くBL小説です。環は黒い耳と尾を持つ細身の職人で、上は男でありながら腰布の下にまんこを隠しています。物語の入口は、巽が新しい下着の見本を頼みに店を訪ね、「結び目だけ、ほどいてもらえますか。下着を縫うなら、下着の下を測らないといけません」と告げる場面です。
この作品を他と分けるのは、巽の言葉づかいが最後まで丁寧なままである点です。「鏡を見なさい。目をそらさないで、自分で見なさい」「環。ここが、ほつれています。直しなさい」といった台詞が示すように、彼は声を荒らげず、仕立ての手順や職人の言葉を借りたまま環を追いつめていきます。表では貸しの取り立てを一度も急かさないという設定も、二人きりの試着室での態度との落差として効いてきます。
仕立ての手順がそのまま行為になる構成
見どころは、採寸や仮縫いといった職人の仕事の流れが、そのまま身体の関係に重なっていく点です。試着室の姿見の前で巻尺ごとクリを押し回されて立ったまま達したり、仮縫いの白い絹を待ち針で肌に留められ動けないまま指ぬきでクリをこねられたりと、道具と手順が行為の枠組みになっています。仮縫いの前布の内側に出され、透けた絹を鏡で見せられる場面も、仕立て屋という設定があってこそ成立する描写です。
場面は試着室から裁ち台へと移り、藍の反物の上での四つんばい、自分で縫った帆布の拘束衣を会頭に締めさせる展開へと続きます。作業場の台で子宮の口まで突かれ、「奥に、出して。……僕の、奥に」と環が自分からねだる流れも、受け身一方ではない関係の変化として読めます。
声をこらえる距離感と、体格差のある攻め
見習いの小浜が帳場にいる板の仕切りの向こうで、環が声をこらえて会頭の奥まで受け入れていく場面も、本作ならではの緊張感を生みます。すぐそばに人がいる状況で声を殺す、という距離の設計が、丁寧な言葉で追いつめられる構図と噛み合っています。体の大きな年上の攻めに奥まで出される展開を好む読者には、巽の「牙とうろこの大きな客」という設定も含めて刺さる要素が多いはずです。
全5話完結・約3.9万字と、まとまった分量で一気に読み切れる構成です。環が会頭の締めた拘束衣の留め穴を自分で広げ、次に来る日を待つという結びも、関係が続いていくことを予感させます。鏡の前で自分の体を見せられる恥ずかしさ、仕事の手順のまま丁寧な言葉で追いつめられる感覚、仕切りの向こうに人がいる中で声をこらめる緊張を味わいたい方に向いています。
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