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▶ 『燻しの番の決まりを書いて貼ったのは私のほうで真っ暗な櫛屋の燻し小屋で櫛挽きに目を塞がれたまま夜ごと種付けされ小箱の櫛が一本増える朝だけ前の晩を知った話』の試し読み・お得なセール状況をチェック!
「決まり」を書いたのは、ヒロイン自身
本作は、櫛屋に弟子入りして五年になる杉戸あやめ(26歳)を視点人物にした官能小説です。彼女は黄楊の木地を燻す小屋の火の番を任されていますが、煙の温みの中では十分も保たず眠ってしまいます。燻しの番の決まりを紙に書いて戸に貼ったのはあやめ自身で、戸を開けるのは明るくなってからと決めたのも彼女です。
この「自分で決めた取り決め」という構図が、作品を他と分ける軸になっています。決まりを書いたのも、内側から楔を打って残ったのもあやめ。読む側からすると、彼女が自分自身の手で状況を固定しているように見えるのが印象的です。
夜ごと小箱に増える櫛と、「入れない夜」を選べる男
あやめが決まりを書いた晩から、棚の小箱に櫛が一本ずつ増えていきます。夜ごとに一本だけ歯を立てて、あやめの名を書いた小箱へ入れるのは城之内貞久(41歳)の役です。おがくずの乾き具合を掌の甲と煙の色だけで決める櫛挽きであり、夜ごと一本入れる役でもあります。
ただし、櫛は嘘もつきます。歯が欠けて挽き直した晩は入らず、深く眠ったはずなのに一本も増えていない朝もありました。つまり城之内は、手を出さない夜を選べる人だった——この一文が、作品の関係性を読むうえでの鍵になります。
「何も見えないまま進んだ夜」の終わりに
物語は、目張りした真っ暗な小屋の中で、あやめが自分で書いた決まりを自分からは剥がさないまま進みます。やがて戸が開いて雪明かりが一気に入り、孕んだと分かった朝、小箱には二本の櫛が入っている——という流れが、あらすじで示されています。
全10章・約2.0〜2.2万字のヒロイン一人称視点。暗闇と目隠し、燻し小屋という閉じた場所、そして自分で定めた決まりという三つが重なる設定は、密室的な関係性をじっくり味わいたい読者に向いています。なお本作はR18の成人向け作品で、登場人物はいずれも二十歳以上です。
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