📝 らぶカル TL小説
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顔も名前も知らない「火曜日のお客様」との、半年分の書き置きから始まる物語
本作の軸になるのは、客室係・浅見結衣と、正体を知らされないまま毎週火曜だけスイートに泊まるお客様との、名前を明かさない交流です。結衣は瑞雲ホテルで客室係を七年続け、十二階のスイート「白鷺」を半年前から担当しています。相手は総支配人預かりの名前で、結衣が勤務を終えた夜に来て、朝が来る前に帰る。顔を合わせたことは一度もありません。
きっかけは、机に残された一枚のカードでした。「この部屋の一番いいところを、一つ教えてください」という問いに、結衣は東の窓の朝を返します。翌週には「見ました。本当に金色だった」と続きが置かれ、週に一往復のやりとりが重なっていく。払いの長い万年筆の字、という細部からも、二人の距離が静かに積み上がる様子が伝わってきます。
「やっと会えた」の九日後、その人はホテルを買収した副社長だった
二十六枚目のカードを置いた日、結衣は初めてその人と顔を合わせ、「浅見さん、ですね。……やっと会えた」と言われます。しかし九日後の全従業員説明会で、壇上に立ったホテル買収グループの副社長・一条怜司こそが、あの人でした。業界での呼び名は「老舗潰し」。冷徹な表情のまま、怜司は「最初の一枚は、査定のつもりで読んだ。二枚目からは、君の答えを読みに来ていた」と告げます。
身分差のある関係が、ホテルの外だけの秘密として始まる。けれど週刊誌が「売却へ」「客室係との書き置きも判断材料に」と書き立て、半年分の結衣の答えが買収のための資料だったのかという疑いが持ち上がります。書き置きのやりとりが、恋なのか査定なのか。その問いが物語を引っ張る構図です。
口説き文句が「質問」な副社長と、見えないのが仕事の客室係
怜司は表情を変えず、命令の代わりにいつも質問をしてきます。「一つ、聞いていいか」「どこがいい。……教えてくれ」。半年間カードで問い続けた人と同じ形の口説き方が、対面しても続くところが本作の特徴です。一方の結衣は、部屋を見ればお客様の暮らしがわかる観察眼を持ち、口癖は「見えないのが、いい仕事ですから」。見えないことを仕事にしてきた客室係と、名前を隠して通い続けた副社長という、対になる二人の設定が組み合わされています。
結衣が十歳のとき、天井が金色に揺れるのを見てこのホテルで働くと決めた過去も描かれます。老舗ホテルを舞台に、書き置きという静かな接点から始まった関係が、買収という立場の差を挟んでどう動くのか。ハッピーエンドと明記され、主人公が傷つけられる展開や無理やりな描写はないとされています。
収録内容と、気になるポイント
- 本文は約76,000字、PDF270ページ(縦書き・文庫サイズ)。番外編を含みます。
- 番外編「二枚目からは」は怜司視点。書き置きを残していた側の内側が描かれます。
- 体験版は第1章〜第2章を収録。書き置きのやりとりが始まる範囲を試せます。
- 性的描写を含む章が複数あり、目次に★が付いています。
- 表紙イラストは生成AIを使用。本文も一部に生成AIを使用し、下書きに用いたうえで作者が加筆・修正しています。
名前も顔も知らない相手との往復から、正体が明かされ、立場の差と買収の疑いが重なる流れを追いたい人に向いています。すれ違いの重さよりも、書き置きが積み重なっていく丁寧な距離感と、質問という形でしか近づけない怜司の在り方が中心です。





