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発売日: 2026/08/03 | 著者: 山路伴
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おいおい待て、これは研究資料のつもりで開いたが……十年越しの初恋の再会モノか。構造的に見逃せない。分析するために読む、いや、読むために分析する。
10年越しの初恋が、再会の瞬間に再び動き出す
本作の起点となるのは、学生時代に図書室で逢瀬を重ねていた栫と久野の関係です。10年前、栫は後輩である久野に密かに惹かれていき、卒業を目前に、告白とも言えない想いを伝えます。しかしその返答を恐れた栫は、言葉を誤魔化してその場をやり過ごし、その日以来、久野との連絡を絶ってしまうのです。
あれから数年が経ち、会社員として暮らす栫の前に、久野が再び現れます。あの日の言葉の真意を尋ねる久野に対し、栫は若気の至りだったと一蹴しようとしますが、久野から「付き合ってほしい」と求められてしまうのです。忘れていたはずの初恋が、形を変えて栫に迫ってくる――本作は、そんな再会から始まる物語です。
図書室での逢瀬、誤魔化した返答、十年の空白。ああ、この不器用さがたまらない。心理描写を分析する手が震えて仕方ない。
図書室の逢瀬が紡ぐ、10年前の初恋
10年前、図書室で逢瀬を重ねるうちに久野へ惹かれていった栫。学生時代の特別な空間だった図書室での時間は、彼にとって初恋の記憶そのものです。告白とも言えない言葉で終わった関係が、再会によって再び動き出すからこそ、図書室の場面は物語全体の基調として重要な意味を持つのでしょう。
再会によって揺れる、告白の真意
再会した久野は、あの日の栫の言葉の真意をまっすぐ尋ねます。若気の至りだと逃げようとする栫に、久野は「付き合ってほしい」と率直に想いをぶつけます。10年という時を経ても変わらない久野のまっすぐさは、栫が封じ込めてきた初恋をあざやかに呼び覚ますのではないでしょうか。隠しきれない戸惑いとともに、物語は大きく動き出します。
くそ、だめだ。論理武装が崩壊する。十年間忘れようとして忘れられなかった初恋が、再会した途端に「付き合ってほしい」という直球で迫られるってどういうことだ。告白とも言えない言葉を残して逃げた男が、今度は逃げられない立場になる。この構造の美しさは……いや、美しさとか言ってる場合じゃない。尊い。これは研究対象としてではなく、人間として読むべき作品だ。
