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発売日: 2026/09/24 | 著者: にしえともか
「週に一度、元教え子に抱かれに行く」――この一文で既に、白鳥という人物の自己認識の歪みが透けて見えるのが巧い。自分の行動を「行く」と能動で書いているのに、主語はどこまでも受動なんですよね。
「正しさ」を生きる男が、唯一手放せないもの
本作の主人公・白鳥は高校教師です。常に「間違えないように」「正しくあるように」と生きてきた人物として描かれています。この設定自体は珍しくありませんが、本作が際立つのは、その正しさの裏側に「やめられないこと」を抱えている点です。それは元教え子である神崎と寝ること。正しくないと分かっていながら、どうしてもやめられない――この矛盾を抱えたまま日常を送る白鳥の姿が、物語の基盤になっています。
神崎との関係は、単純な恋愛とも呼べない構造を持っています。白鳥は神崎に「正しい自分を壊されていくような快楽」を覚えており、離れたくても離れられない。ここで描かれるのは、依存とも執着ともつかない、しかし明確に白鳥自身の意志で選び続けている関係です。週に一度という反復の形式が、その意志の在り方を象徴しているように読めます。
物語が動き出すのは、白鳥が学校で神崎にまつわる噂を耳にしたときです。日常に埋め込まれた反復が、外部からの情報によって揺らぐ瞬間が用意されている。この噂が何を指すのかはあらすじでは明かされていませんが、白鳥の「正しさ」と「やめられなさ」の均衡が崩れる起点になることは確かでしょう。
「快楽で壊される」という受動の語彙を、白鳥自身が選んでいるのが……いや、これ、自分で選んでるんですよ。壊してほしいと願っている。その自覚があるから「やめられない」になる。ここ、かなり効きます。
見どころ
- 「正しさ」の設計と崩壊の予兆:白鳥は「間違えないように」「正しくあるように」という基準で自己を統制してきた人物です。その基準が神崎との関係によって侵食されていく過程は、単なる禁断の恋愛とは異なる構造を持ちます。正しさを保とうとするほど、やめられなさが際立つ。この逆説的な緊張が全編を貫く設計になっている点が魅力です。
- 「週に一度」という反復の意味:あらすじで示される「週に一度」という頻度は、関係の性質を端的に表しています。日常に組み込まれた儀式のような反復でありながら、白鳥にとっては「どうしてもやめられないこと」。この反復が、噂という外部要因によって崩れるとき、何が露呈するのか。反復の形式そのものが物語装置として機能している点に注目です。
- 元教え子という関係性の重力:神崎は白鳥の元教え子です。教師と生徒という非対称な関係が、関係の終了後も尾を引く。白鳥が「正しくあるように」生きてきた人物であるほど、この過去の関係は重くのしかかる。神崎側の心情はあらすじでは語られていませんが、白鳥を「壊す」側にいる人物として、その行動原理がどう描かれるかが見どころになります。
こんな人におすすめ
- ✅ 「正しい自分」と「やめられない自分」の矛盾を抱えた人物の内面描写をじっくり読みたい方。白鳥の自己統制とその綻びが丁寧に描かれる作品を求めている人に向いています。
- ✅ 教師と元教え子という、終わったはずの非対称な関係が現在進行形で尾を引く構造に関心がある方。単なる禁断関係ではなく、関係性そのものの重力を描いた物語を読みたい人に。
- ✅ 「離れたくても離れられない」という依存と意志が混在した関係を、心理の複雑さとして味わいたい方。噂という外部要因が二人の均衡をどう崩すのか、その展開を追いたい人に。
あの……すみません、冷静に構造を整理するつもりだったんですけど、「正しい自分を壊されていくような快楽が忘れられない」って一文で、もう僕は駄目なんですよ。だってこれ、壊されることを選んでる自覚があるってことじゃないですか。やめられないのは意志が弱いからじゃなくて、壊されたいからやめられない。教師としての正しさを掲げながら、その正しさごと欲している。噂が耳に入ったとき、白鳥がどういう顔をするのか……あらすじだけでここまで来てしまって、続きを読む前から心臓が忙しいです。




