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自分が創り出した世界に閉じ込められた、29歳作家の運命
ヒット作にした「王宮のプリンス」。その最終巻を書く直前、トラックに轢かれて転生してしまう――。目覚めた先は、まさに自分が作り上げたラノベの世界。しかも頭の中の「謎の声」は、この世界で生きる力を得るために、自分が生み出したドSな3王子に抱かれろと告げるのです。
「愛されないと死亡エンド」。なんとも容赦のないシステムを自ら創り出してしまったものだわ、と苦笑してしまう。デビュー以来長らく売れずに苦しんできた真琴が、ようやく掴んだヒット作。その世界に自らが飛び込むという、皮肉と運命のめぐり合わせがもう、大人のTLとして最高のスパイスになっています。
作者である自分が、自分の書いたキャラクターに「抱かれる」ことでしか生き残れない。この倒錯感、嫌いじゃない……いや、むしろ好物です。現実では絶対に味わえない、フィクションの特権的なシチュエーションを、29歳という年齢設定がより生々しく、そして切実に見せてくれています。
キャラクターの魅力と関係性
物語の鍵を握るのは、真琴が生み出した「難アリのドSな3王子」。中でも最初に協力を申し出てきたのが、一番避けたい「最凶第一王子エドガル・フォン・ヴェルフ」。避けたい相手がまさかの最初の協力者という、この逆転の構図がまず心を掴まれます。
真琴は自分が作ったキャラクターだからこそ、彼らの本質を理解しすぎている。その「知りすぎている」ことが、逆に逃げ場をなくしているようにも感じられます。王子たちの危険度を知っているからこそ、エドガルに頼るしかないジレンマが、読み手の緊張感を高めてくれます。
契約でもなく、純粋な好意でもなく、「生きるため」という切実な理由から始まる関係。この出発点の不純さが、むしろ今後の愛の深さを予感させるんです。最初は利用だったはずなのに、いつの間にか溺愛へと変わる――その過程を、現実を生きる私たちはじっくりと噛みしめたい。
「避けたい」と思わせる最凶王子の危険な魅力
エドガル・フォン・ヴェルフ。第一王子であり「最凶」と称される存在。真琴自身がそう思うほどに、彼の危険さは並大抵ではないのでしょう。ドSという言葉がぴったりな王子に、物語の最初から絡め取られていく展開は、読んでいて背筋がぞくりとします。
しかしこの「避けたい」という感情こそが、彼の魅力の裏返しだと思うんです。真琴は自分の書いたキャラクターだから、彼の何が危険かを知っている。その危険な男が「協力を申し出る」という行動に出る。単なる紳士的な助けではなく、何か別の思惑を感じさせるこの出だしが、今後の展開への期待を膨らませます。
29歳・売れない作家だった真琴のリアルな苦悩
真琴のバックボーンが良い味を出しています。デビュー以来長らく売れず、苦しい日々を送っていた作家。その彼女が必死に書いたヒット作が「王宮のプリンス」。続編のためなら、難アリな王子たちに全精力を注ぎ込んでしまう。その創作への情熱が、まさに今回の転生の伏線になっているのが憎い演出です。
29歳という年齢も、この物語にリアリティを与えています。少女ではなく大人の女性が、自分の創造物の世界で翻弄される。売れない時期の焦りや、ヒット作への思い入れ、そして自分の作品世界に迷い込んだ困惑。作者としての「我が子」への愛が、王子たちとの関係にどう影響していくのか。そこも見どころになりそうです。
