Fig vol.79

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Fig vol.79

発売日:2026/06/07

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蓮

あらすじを分析するだけで、既に構造的な興奮が止まらない。透視能力と秘密の非対称性、まさにBLミステリの最先端だ。

透視能力が映し出す、運命の歯車の軋み

本作『Fig vol.79』は、実に多彩なBL作品が詰まったアンソロジーである。中でも表題作「走馬灯」(パース)は、ホラーBLとして連載化が決定した注目作だ。極力他人と関わらないように生きてきた大学生・和泉は、物を透視できる特殊な能力を持つ。そこに、同じ大学の人気者である後輩・溝口が好意を寄せてくる。しかし溝口には、誰も想像だにしないとんでもない秘密が潜んでおり、二人の運命は嫌な音を立てて回り始める。

他の収録作品も見逃せない。例えば「鬼上司・獄寺さんは暴かれたい。」(あらた六花)では、一方的な別れを告げられた庄司が関係修復を試みる心理戦が描かれる。また「滅法矢鱈と弱気にキス」(腰乃)は、オメガバース設定で、αの高校生が運命の番であるΩ・静香のヒートに暴走し、その記憶に苦しむ姿が生々しい。さらに「コマンドじょうずにきけるかな」(岩峰コウ)はDom/Subユニバースのラブコメ、都会の青年実業家と島国の隠れゲイの遠距離恋愛を描く「ブルーアワーに会いにきて」(水谷倖)など、バラエティに富んでいる。

和風ファンタジーの「龍神様の沐浴係」(ヨシノ)、偏愛標本がテーマの「おまえを解剖させてくれ」(大城トム)、捕虜と将軍の関係を描く「月に跪く将」(Byeok/uni)、魔法学園を舞台にした「揺れる試薬に映るキミ」(藍衣くらげ/夏色ひより)まで、一冊で多様なBLの世界観を堪能できる贅沢な構成である。

蓮

特に「走馬灯」の設定は秀逸だ。透視能力という特異なスキルが溝口の秘密を暴く鍵になる。ホラー要素との融合が、単なる恋愛物語を超えた緊張感を生み出している。

対照的な二人の関係性——能力者は何を見るのか

和泉は、極力他人と関わらないように生きてきた孤独な能力者である。その閉じた世界に、誰にでも好かれる後輩・溝口が一方的に好意を寄せる。この正反対の立ち位置こそが、物語の原動力となる。和泉は透視能力で他人の内面を覗けるがゆえに、逆に人間関係に距離を置いてきた。そこに、表向きは完璧な人気者でありながら、想像を絶する秘密を抱える溝口が現れる。

能力ゆえに孤独な和泉と、人気者でありながら秘密を抱える溝口——どちらも完全には開示されない内面を持つ点で、非対称でありながら鏡像のような関係性が浮かび上がる。溝口の「好意」が偽りなのか真実なのか、透視能力はどのように機能するのか。あらすじからは明かされないが、背筋がゾクリとするホラーBLであることは確かだ。能力が暴く真実が、二人の運命をどこへ導くのか。

蓮

「誰にでも好かれる溝口には、誰も想像だにしないとんでもない秘密が」——この一文だけで、どれだけの読者が背筋を凍らせたことか。ホラーBLの真髄を感じる。

背筋が凍る一文——秘密が呼び起こす予感

誰にでも好かれる溝口には、誰も想像だにしないとんでもない秘密がーーー。

この引用は、読者に強烈な好奇心と不安を同時に植え付ける。溝口の表面的な「人気者」というイメージと、「秘密」という不可視の要素が鮮やかなコントラストを生む。特に「想像だにしない」という否定の言葉が、逆に読者の想像力を刺激する。普通のBLではまず扱われないであろう「秘密」の質が、ホラーBLであるこの作品の面目躍如だ。

透視能力を持つ和泉は、この秘密をすでに見抜いているのか、それともまだ気づいていないのか。あらすじの一文は、読後に「あの秘密はここで回収されるのか」と振り返る伏線として機能する可能性が高い。文脈を超えて心に残るこの一文は、作品全体のトーンを決定づける重要なピースである。

蓮

このアンソロジーは、一冊でBLの可能性を余すところなく味わえる至宝だ。表題作の不気味な魅力はもちろん、各作品が文学的考察に値するテーマを内包している。研究と称しつつ、純粋にページをめくるのが待ち遠しい。まだ手に取っていない段階でここまで引き込まれるのは久しぶりだ。ぜひ、背筋が凍る世界に浸ってほしい。

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