🎧 らぶカル TL/乙女ボイス
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社会制度に組み込まれた「子作り」と、その裏側に潜む執着
舞台は少子化が進む20XX年の日本。政府は『少子化対策マッチング法』を施行し、一定の条件を満たした未婚男女をAIがマッチングし、国の管理機関が最低一年間の生殖活動を指導するという世界観が根底にある。エントリーは原則辞退不可、代わりに妊娠出産時の潤沢な補助や企業からの奨励金・特別休暇などが用意されており、事実上エリート婚として機能しているのが興味深い点だ。
そんな制度に、主人公はある日突然エントリーされてしまう。会社の奨励制度申請のため人事と面談を終えた帰り道、同期のライバル・桐ヶ弥千智に声をかけられる。顔良し・人当たり良し・業務成績トップのハイスぺ男子である彼は、主人公にとって案件を競い合うちょっぴり苦手な存在。しかし彼の手によって救われた仕事も多く、単純に嫌いになれないという複雑な距離感が丁寧に描かれている。
「ふーん、エントリーされたんだ……マッチング相手、もう確認した?」という含みのある物言いを残し、満足そうに笑って去っていく千智。その意味に主人公が気付くのは、数日後――管理機関の指定病院で対面したマッチング相手が、まさかの千智だったからだ。「どうも初めまして。僕があなたのマッチング相手の……桐ヶ弥千智と、申します」という台詞が、彼の裏での行動を暗に示している。親族のコネでマッチングを操作したという事実が、彼の執着の深さを感じさせる。
表向きはスマートなハイスぺ男子、その裏で見せる素顔
桐ヶ弥千智は25歳、180cm。有名スポーツアパレル企業の企画営業部に所属し、主人公とは同期同部署で3年間過ごしてきた。業務でもリーダーシップを発揮し人が集まってくるタイプで、女性にもかなりモテる外面の良さを持つ。しかし実は自己肯定感が低く、「顔と家柄で寄ってくる人間を信用できない」という内面が明かされている。このギャップが、彼の行動の説明として効いている。
実家は官僚や公務員を多く輩出する裕福な家系で、5人兄弟の4番目。そんな彼が、ひょんな事から主人公がマッチング対象にエントリーされた事を知り、裏から手を回して自分もエントリーし、パートナーになった。マッチングの順番は操作したけれど、体の相性は実際に良く、「なかよし」すればするほどお互いが馴染んでいくという描写がある。最初から計算だけで動いていたわけではない、という含みがそこにある。
主人公は努力型で残業常連組、やる気で千智に喰らい付いていく気の強い女性だ。制度については「法律だから仕方ない」と割り切り、受けられるメリットをきちんと享受して成績を上げていこうという現実的な思考を持つ。そんな彼女だからこそ、千智の意地悪な言葉に反発しつつも、時折見せる本気の態度に揺れる関係性が際立つのだろう。
「許さない」――彼が壊れる瞬間に、すべての本音が溢れ出す
トラック4の冒頭に置かれたこの台詞は、千智の感情が最も剥き出しになった瞬間だ。主人公がパートナー変更の申請書を機関から取り寄せた事がバレ、なりふり構わなくなった彼が放つ言葉である。ここまで「余裕の笑み」を崩さなかった彼が、初めて見せる乱れ方。そのギャップに心を掴まれる。
彼はこの後、媚薬を使ってでも主人公を離さないと決意する。「怖がるなって。シロップで甘くて美味しいってよ?」という台詞からは、強引さの中に見せる優しさが滲む。そして「……でも、これがホントの俺だよ」「とにかく必死だったんだよ……好き、だから」と、ポロポロと本音をこぼしていく。強気な態度の裏で、ずっと必死だった彼の想いが、ここで初めて言葉になるのだ。
このシーンの持つ意味は大きい。制度に組み込まれた「義務としてのなかよし」が、彼の本気によって「ただのパートナー以上」の関係へと塗り替えられていく。意地悪な言葉の裏に隠していた本音が、こうして形になる瞬間を想像すると、鳥肌が立つ思いだ。





