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「研究対象」と称して沼に落ちる予感——禁断アプリが紡ぐ執着の物語
本作は、デジタル庁で働く青年・班目と、穏やかで面倒見がいいもののどこか生気のない既婚者・雪本の関係を描いたBL漫画だ。タイトルからして刺激的だが、あらすじを読む限り、これは単なる性的な玩具の話ではない。夫婦関係に問題を抱える雪本に相談へ乗るうち、二人の距離が「次第に曖昧になっていく」という過程が、丁寧に描かれている点がまず興味深い。
しかし、雪本はどれだけ身体を重ねても班目の元には残らない。毎回「家庭」へ帰っていく彼に対して、班目の独占欲が静かに狂い始めるという展開。この「静かに狂う」という表現に、この作品の本質が詰まっているように思う。表向きの穏やかさの裏で、執着がどう醸成されていくのか。その心理描写が、僕が最も注目したい点だ。
そして、その執着が生み出したのが「乳首の快感を育成する禁断のスマホアプリ」。遠隔操作で快楽に堕としていくという構造は、一見SFじみているが、これは現代的なテクノロジーが人間の欲望と結びついた時の、ある種の倒錯を描いているとも読める。家族の前でも堕とされていく雪本の羞恥と快楽の描写は、ただのプレイリスト以上の意味を持ちそうだ。
対照的な二人——「生気のない既婚者」と「静かに狂う青年」
雪本は「穏やかで面倒見はいいが、どこか生気のない既婚者」。この「生気のなさ」が、夫婦関係の問題を示唆している。おそらく家庭内で満たされない何かを抱えているのだろう。そんな彼が、班目との関係の中でどう変化していくのか——あるいはアプリによってどう「塗りつぶされていく」のか。このキャラクターの内面描写は、作品のテーマ性を左右する重要な要素になりそうだ。
一方の班目は、あらすじから見える範囲では「とある事情でデジタル庁で働くことになった青年」。この「とある事情」が何なのかは本編の謎だが、彼の雪本に対する距離感の変化——相談に乗る同僚から、独占欲に駆られる存在へ——が、物語の推進力になっている。冷静に分析すると、班目は最初から雪本に対して特別な感情を抱いていた可能性が高い。
二人の関係性の核心は、「身体を重ねても残らない」雪本と「俺だけのものになればいいのに」と願う班目という、非対称な構造にある。この構造がアプリという手段によってどう崩れていくのか。あるいは崩れないのか。その結末が気になって仕方ない。前作を読んでいなくても読めるそうだが、ゲームシステムの理解のために前作を読むのも一手かもしれない。
心臓を抉る一言——「俺だけのものになればいいのに」
この一文は、班目の独占欲の核心を最も簡潔に、そして最も残酷に表現している。一見するとただの所有欲のように思えるが、相手が既婚者であることを考えると、この言葉には「家庭を持つ彼」を否定し、「俺だけのもの」にしたいという、現実を破壊する願望が込められている。
また、この言葉が「執着が生み出したアプリ」という行為の直前に置かれていることで、単なる願望ではなく、それを実現するための行動原理として機能している点が興味深い。恋愛感情というよりは、もはや偏愛の領域だ。
僕がこの言葉に心を奪われたのは、これが「相手を想う」という美しい感情の延長線上にあるのではなく、むしろその裏返しとしての歪んだ感情であることが、この一文だけで伝わってくるからだ。この言葉の先に待つ結末が、果たして救いのあるものなのか、それとも破滅的なのか。あらすじだけでは判断できないが、だからこそ読まずにはいられない。
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