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📝 DLsite TL小説
「継ぎの合い」をめぐる、指先だけの距離感
本作は、釣具屋をひとりで切り盛りする二十九歳の沓掛かなめと、竹を継いで和竿を作る三十七歳の竿師・相模庄次のあいだに生まれる、時間のかかる関係を描いたTL小説です。物語の軸になるのは、竿の「継ぎの合い」。番を一つずつ合わせ、合いの出ていない番があるうちは一本にしない――その判断を物差しではなく指の腹だけで下す庄次の仕事ぶりが、そのまま二人の距離の測り方になっていきます。
かなめは父の代からの店を継ぎ、売る前の竿は必ず自分で一度振るという仕事を持っています。振り終わりに穂先で水面を二度叩く癖も、彼女の人物像として丁寧に置かれています。折れた穂先を携えて竿師のもとを訪ねるところから、注文と立ち会いの関係が始まる構成です。
九年ぶん、折った穂先が一本もないという事実
物語の転機は、庄次が棚の奥の桐箱を開けて手を止める場面です。九年ぶんの折った穂先が一本もない。代わりにあるのは、継ぎ目が九つある竿が一本だけ。かなめが折った穂先だけで、この人は一本に継いでいた――という展開が、あらすじで明かされています。
ここで重要なのは、それがかなめの知らないところで積み重なっていた仕事だという点です。注文書の末に庄次自身の字で「継ぎ上がるまで注文主が立ち会うこと」と一条が足されていること、彼が一番合わせては前の番を外し、寝かせる竿を一本ずつ増やしていくこと。立ち会いという名目の時間が、少しずつ長引いていく構成になっています。
継ぎ目がどこか、指で分からないまま重ねられる夜
あらすじでは、継ぎ台の上でも、寝かせた竿の脇でも、夜が重ねられていくことが示されます。どこが継ぎ目かと訊くと、庄次は指を滑らせて止めた場所だけを答える。この答え方の抑制が、本作の空気を強く特徴づけています。
最後の番の合いが出た朝、庄次は竿を袋に入れて差し出します。かなめは店には寄らずに川べりへ下りて、一度だけ振る。九年という時間と、継ぎ場で過ごした夜とが、この一度の動作に収束していく流れは、読みどころとして意識しておきたいところです。
こんな読者に合いそう
- 言葉にしない執着や、時間をかけて積み上がる関係性を読みたい方
- 職人の仕事ぶりと、二人の距離の変化が重なる構成に惹かれる方
- 年の差のある相手との、静かで濃い時間を味わいたい方
- 派手な展開より、指先や間合いの描写で心情を追いたい方
全61ページのR18作品で、登場人物はどちらも十八歳以上の成人として描かれています。和竿の継ぎ場を舞台にしたフィクションであることも明記されています。あらすじの時点で、焦らしと執着の気配がはっきり漂う一作です。
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