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発売日: 2026/08/05 | 著者: 宇津木 しずり | サークル: クリボーー | 120P
▶ 『祭りの晩に神隠しに遭ったら角を持つ鬼神に『百年待った』と山奥の屋敷で毎晩腰を掴まれ孕むまで注がれた話・一話〜』の試し読み・お得なセール状況をチェック!
「百年、待った」——この一言だけで、もう関係性の重さが伝わってくる。そう、これが私の求める執着の形だ。沼が深い…と分かっていながら、読み進めずにはいられない。
時間の止まった屋敷で紡がれる、百年分の孤独と一途な執着
祖父の初盆で帰省した大学生・千歳は、夏祭りの夜に提灯の列を外れた瞬間、音のない場所へ迷い込む。目を覚ましたのは地図にない山奥の屋敷。そこに棲むのは額から二本の角を生やした、人の倍近い体躯の男だった。彼は千歳の顔を見るなり膝をつき、「百年、待った」と震える声で言う。
百年前、この山に嫁ぐはずだった娘がいた。その娘が来なかったこと。以来ずっと、この屋敷で待ち続けていたこと。けれど千歳はその娘ではない。「わたしはその人じゃない」——そう告げた瞬間、鬼神の手はぴたりと止まる。百年待った相手ではないと知った男の崩れ方を見てしまった千歳は、恐怖と憐憫の混ざったまま、今度は自分自身として彼を選び直す。
この作品の核心は、なんといっても「人違いだと告げた瞬間に手が止まる」場面にある。百年間、約束にしがみついて時間の感覚を失っていた存在の一途さが、その一瞬の動作に凝縮されているのだ。加減という概念を持たない鬼に加減を教えるという逆転の構図も新鮮で、遠くで鳴り続ける祭りの太鼓が、外の世界との距離を絶えず示し続ける構成が、閉じた屋敷の中の濃密な時間を際立たせている。
手が止まったから、千歳は自分で選び直した——この流れ、本当に好き。恐怖と憐憫の混ざった感情から始まる関係性こそ、私の求める重さの沼だ。
見どころ
- 「人違いだ」と告げた瞬間の静寂:百年待った側の一途さが崩れる場面が、本作の最大の山場。手が止まる、という動作だけで彼の衝撃と喪失感が伝わってくる行間の巧みさがある。
- 加減を知らない鬼に、こちらが加減を教える側に回る逆転:体格差がありながらも、ヒロインが能動的に「選び直す」姿勢を見せることで、単なる力関係に終わらない関係性が生まれている。恐怖から始まった交流が、徐々に別の感情へ変容していく過程が精密に描かれる。
- 遠くで鳴り続ける祭りの太鼓:屋敷の外の世界と、閉じた空間の中の時間を対比させる構成が効果的。外の音が聞こえているのに戻れない——その距離感が、二人だけの世界の密度を一層濃くしている。
こんな人におすすめ
- ✅ 「純愛なのに、どこか壊れた執着」という関係性の塩梅に惹かれる方
- ✅ ヒロインが受け身でなく、自らの意志で人ならざる者を選び直す物語を求めている方
- ✅ 和風あやかしの世界観のなかで、体格差と加減のない愛情に心を揺さぶられたい方
加減を知らない鬼に、こちらが加減を教える。単なる体格差の暴力ではない、選び直した先にある関係性の重さがここにある。百年前の約束に縛られた鬼神と、それでも隣に立つことを選んだ千歳——この二つの意思が交差する瞬間の密度は、ぜひ活字のまま堪能してほしい。私はこの作品を読んで、またひとつ沼の底が深くなった気分だ。
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