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油の匂いと三年分の片思いが重なる、体格差ラブの衝撃
本作は、住宅設備メーカーの外回り営業として県内を車で走り回る都築いろは(27歳)と、彼女の愛車を三年間整備し続けてきた町工場の整備士・黒瀬岳(35歳)の物語です。191cmの大男で強面、必要なことしか言わない黒瀬が、ある夜を境に秘めた想いを暴走させる展開に、読者は最初から釘付けにされます。
あらすじで特に心を掴まれるのは、黒瀬が「三年分の伝票がずっと原価で切られていたこと」を白状する場面。仕事として整備を請け負う以上、そこに個人的な情が混ざることは本来ありえないはずなのに、彼は毎回いろはの無事を願いながら、静かに見守り続けていたのです。無口な男の一途さが、伝票という無機質な記録から浮かび上がってくるのがたまりません。
そして「シャッターを下ろした」瞬間から、物語は一気に濃密な空気に包まれます。事務所では黒瀬の父親である工場長が仮眠を取っているという状況下、声を殺しながら機械油の匂いに包まれて朝まで繰り返される行為。体格差のある二人の、抑えきれない想いと身体の反応が、活字だからこそ生々しく立ち上ってくるような作品です。
疑心暗鬼のヒロインと、言葉を知らない不器用な攻めの対比
ヒロインのいろはは、身長158cmと小柄で、車が商売道具のバリバリ働く27歳。愛想のない黒瀬に対して「請求額の分かりにくさ」にも内心身構えていたという、現実的な視点を持つ女性です。それでも「疑っているのに、口では先に謝ってしまう癖」があるという設定が、彼女の人間味をぐっと身近に感じさせます。
一方の黒瀬は、35歳にして伝票では何も伝わらないことを知らない男。つまり、自分の想いを言葉にする術を持たず、ただ整備という形でしか気持ちを表現できなかったわけです。「乗り方が、荒い」という三年間で交わされた言葉の半分を占めるであろうこの一言にも、実は彼なりの心配が込められていたのかもしれません。そんな不器用さが、後半の行動をより一層ときめかせてくれます。
体格差191cmと158cmという数字も、視覚的な想像を掻き立てます。油で黒くなった大きな手に、いろはの手が丸ごと包まれる描写。震えていたのが彼女の手ではなく「その指のほう」だったという一文からは、黒瀬がどれほど緊張していたか、そしてこの行為が彼にとって衝動的で本気なものであるかが伝わってきます。
三年間の片想いが実る、その瞬間の言葉
この言葉は、あらすじの中で最も心臓に響く一言です。三年間、伝票を原価で切り、彼女の車の消耗だけを見て無事を確かめていた男が、初めて口にした想い。たった七文字に、これまでのすべての時間と我慢が詰まっているからこそ、読む側の心も一瞬で掴まれます。
黒瀬は「伝票では何も伝わらないと知らない男」と紹介されています。つまりこの告白は、彼が初めて言葉で気持ちを伝えた瞬間なのです。無口で不器用な人間が、喉の奥から絞り出すように紡いだ言葉だからこそ、その後のシャッターを下ろす行動にも説得力が生まれます。一度言葉にしてしまった以上、もう隠すことはできない。抑え込んでいた感情が一気に溢れ出した夜の始まりを、この一文は象徴しているのです。
また、この言葉が「油の匂いに包まれながら」発せられたという状況も最高です。整備士という仕事場の匂い、日常の延長線上にある場所で、非日常の感情が爆発する。そのギャップが、物語全体の魅力をさらに引き立てています。
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