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優しい嘘と消えた記憶――静かに絡み合う二人の関係
目を覚ますと、自分の名前以外の記憶を失っていたあなた。混乱する中で現れたのは「あなたの知り合い」と名乗る男性。彼は病院の医師であり、幼馴染だと言うけれど、あなたにはその記憶が一切ない。記憶が戻るまで一緒に暮らそうという彼の提案に、頼る人がいない状況で頷くしかなかった――。そんな切ない出発点から物語は始まります。
本作は「TL/乙女ボイス」として、事故から1年間眠り続けていたヒロインと、彼女を支える医師の男性・矢神日々希の関係を描くシチュエーションボイスドラマです。全9トラック構成で「記憶」「共同生活」「あなたのこと」「ふたりの時間」「戸惑い」「雨」「あの日」「想い」「これから」と、時間の経過とともに二人の距離が変化していく様子が丁寧に収録されています。
何より注目したいのは、全編にダミーヘッドマイクが使用されている点。甘いセリフのシーンで本当に耳元に囁かれているような臨場感を味わえる仕様になっています。公式サイトの紹介にもある通り、イヤホンやヘッドホンで聴くことで、彼の存在がすぐ隣に感じられる体験ができるでしょう。記憶を巡って彼との関係が絡み合う、ちょっぴり切ない物語の第一弾として、今後のシリーズ展開にも期待が高まります。
知的でクールな医者が見せる、不器用な深い愛情
矢神日々希は29歳の医者。身長185cm、血液型AB型の彼は、知的でクールに振る舞う一方で、ヒロインに対しては不器用ながらも深い愛情を示す性格と紹介されています。一人称は「私」が基本で、くだけたシーンでは時々「俺」に変わるという設定も、親密さの度合いを表現するポイントになりそうです。
好きなものが白ワインと猫、嫌いなものが不摂生、趣味は旅(海外より国内が落ち着く)という彼のパーソナルな情報も、キャラクターの日常を想像させる要素です。医者でありながらヒロインの幼馴染だったという関係性は、単なる再会ものではない一筋縄ではいかない緊張感をはらんでいます。彼がなぜ記憶を失ったヒロインの前に現れたのか、どんな秘密を抱えているのか。
「一緒に過ごすうち、次第に明らかになる彼の秘密」というあらすじの一文からも、日常の中に潜む嘘や戸惑いが描かれることが予感されます。記憶のないヒロインと、その記憶を知っている男。この非対称な関係性こそが、本作の切なさと背徳感を生み出しているのでしょう。CVを務める大河元気さんの演技にも注目したいところです。
「記憶が戻るまで一緒に暮らそう」という優しい提案の裏側
この言葉は、一見すると親切心からの申し出に見えます。しかし記憶を失ったヒロインにとって、目の前の男性が本当に幼馴染なのか確かめる術はありません。医者という社会的な立場と、「頼れる人がいない状況」が、彼の申し出を受け入れざるを得ない心理的な状況を作り出しています。
「優しく提案する」という表現には、善意の裏に別の意図が潜んでいる可能性を感じさせます。記憶が戻るまで、という期限付きの同居生活。それは彼にとって、本当にヒロインのためを思ってのことなのか、それとも何かを隠すための方便なのか。あらすじで明かされている事実としては、彼の秘密が徐々に明らかになっていくということだけですが、その秘密が何であるかは聴いてからのお楽しみでしょう。
記憶を失ったヒロインの視点に立てば、彼の言葉は「頼れる人がいない状況」での唯一の手がかり。その手を取るしかない切なさと、彼の抱える秘密の重さが交差する、静かで緊張感のある出だしになっています。
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