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形式上はビジネス婚。なのに彼は「恋愛結婚する気」——その温度差に心がざわつく
22歳の雛子と、幼い頃に親同士が決めた婚約者・久我律希。16歳の婚約式以来、没交渉だった二人の関係が、ホテルのバーでの偶然の再会から動き出します。美女とテーブルにつく律希を見て、政略結婚と割り切っていたはずの雛子が心を揺らす——その描写だけで、彼女の複雑な心情が立ち上ってくるようです。
物語の転機は、酔いつぶれた律希を雛子が介抱し、気づかれないよう黙って去ったこと。この「黙って去る」という選択が、後の展開にどう響くのか。そして就職した会社の社長がまさかの律希で、「これから俺の抱き枕になれ」と命じられる——親公認の同棲生活が始まるという流れは、契約結婚の枠組みを保ちながらも、明らかにビジネスだけでは収まらない色を帯びています。
「雛子が自分のことを好きになるのを待つ」と宣言する律希の言葉は、一見甘やかすようでいて、その実、逃げ場をなくす執着の匂いがする。普通の恋人同士のような扱いを受けながら、根底には決して逃がさないという意志が透けて見える——この二面性こそが、TLとしての醍醐味を支えているのだと思います。
無自覚に心を動かされる雛子と、待つと決めた律希——二人の距離感が絶妙
雛子は、政略結婚と割り切っていたからこそ、律希の「普通の恋人同士のような扱い」に戸惑いを隠せないはず。16歳で婚約式を挙げて以降、没交渉だった相手に突然社長として呼び出され、抱き枕になれと言われて同棲が始まる——日常を急に侵食してくる律希の存在に、彼女の心がどう揺れるのかが見どころです。
一方の律希は、ビジネス婚の予定だったはずなのに「恋愛結婚する気」でいる。彼の言葉は一貫して雛子を待つ姿勢を示しているけれど、その待ち方が非常に能動的で、彼女の生活圏そのものを自分の隣に移してしまっている。親公認という逃げ場のなさも相まって、これはもう「待つ」という名の囲い込みに近いものがあると感じます。
二人の関係は、契約から始まりながらも、律希の一方的な溺愛によって少しずつ形を変えていく——そんな過程が丁寧に描かれているのでしょう。雛子がいつ、どのようにして律希への気持ちを自覚するのか、その心理の機微がこの物語の核心だと思います。
「これから俺の抱き枕になれ」——唐突な宣言に隠された、彼の本心
この言葉の何が心を捉えるかといえば、あまりにも唐突で、かつ命令形であること。ビジネス婚の予定だった関係性なら、同棲を提案するにしてももっと角のない言い方があったはずです。それなのに律希は「抱き枕になれ」と、物理的な距離をいきなりゼロにするような言葉を選んでいます。
これは単なる傲慢ではなく、彼なりの精一杯の距離の縮め方なのだと想像できます。16歳以来の没交渉を経て、彼女にどう近づけばいいのかわからないまま、それでも彼女を自分の隣に置きたい——その不器用さが、命令形の裏に滲んでいるように感じられるのです。
そして「親公認」という点がまた、逃げられない構造を決定づけています。雛子にとってこの同棲は、断ることのできない、最初から決められたレールの上での生活。そこから恋愛が芽生えていく——あるいは芽生えさせられていく——過程に、多くの読者が心を掴まれるのではないでしょうか。
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