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発売日: 2026/09/11 | 著者: 七瀬京 / 藤掛ヒメノ / Pro-ZELO
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え、待って。「でも今は俺、小鳥さんにイタズラがしたいです。」この一文だけで完全に持っていかれた。商店街×パティシエ×幽霊騒ぎ、もう情報量が多すぎて……じわじわ来る。
甘い香りと幽霊騒ぎが同居する商店街——じわじわ沁みる再生の物語
「桜町商店街シリーズ」は、長くシャッター街だった桜町商店街を舞台にしたBL小説です。空き店舗への誘致から始まった「桜町商店街再生プロジェクト」によって、この街の住人となった小鳥翼。彼は商店街でパティスリーを開業した青年です。
小鳥には、かつてパティスリーのあった場所に存在していた駄菓子屋で売られていた「みんなのおやつ」を継承したいという思いがありました。しかし再現は難しく、どうにも上手くいかない。昔から商店街に住む花屋の青年・青柳陸斗に試食を頼む日々が続きますが、陸斗いわく小鳥が作る「みんなのおやつ」は美味しすぎるのだとか。ここ、いい。美味しすぎるのが悩みって、ものすごくその人らしい。
そしてハロウィンも近づく商店街に、本物の幽霊騒ぎが巻き起こります。甘いスイーツの香りが漂う日常の裏側で、新たな騒動が動き出す。再生という静かな営みと、非日常の気配。この対比がたまらないんですよね。
「美味しすぎる」って言われて悩む小鳥さん、その時点でもう関係性が濃い。陸斗さんが毎回試食してるって、それ日常の距離感がすごい。幽霊騒ぎでこの二人がどうなるのか……見守りたい。
「イタズラがしたい」——この一文に込められた距離の近さ
――でも今は俺、小鳥さんにイタズラがしたいです。
この一文、あらすじの冒頭に置かれているのが本当に効いています。まだ本編の流れを知らない読者に、いきなり「イタズラがしたい」と告げられる。しかも「でも今は」という逆接から始まる。何かが変わった、何かを経て今に至ったという気配だけを残して、物語は商店街の日常へと入っていく。
小鳥と陸斗の間にある、「試食を頼む」というささやかなやりとり。その関係がどんなふうに動いていくのか、この冒頭の一文が静かに予告しているように思えます。派手ではないけれど、じわじわと二人の距離が変わっていくんだろうな、と。そういう予感だけで十分に惹き込まれます。
冒頭にこれを置くの、作者さんの自信ですよ。日常から始まって、この一文に辿り着くまでの過程を読ませる気満々。あたしはもう、その過程を噛みしめたい。試食のシーンひとつひとつ、行間まで味わいたい。
商店街の再生と、おやつの継承と、幽霊騒ぎと、二人の距離。全部が「継承」や「手放せなさ」で繋がってる気がして、もう……。派手な事件だけじゃなく、静かな心情の積み重ねを大事にする作品なんだろうなって。そういうの、あたしは読みたい。じっくり、じわじわ、心に沁みるやつ。続きを噛みしめながら読みます。





