📝 DMM.com BL小説
▶ 『一生かけて償います、と貴方は笑った』の試し読み・お得なセール状況をチェック!
前世の殺し手と、記憶を持たない再会――すれ違う記憶が生む心理の重層構造
本作の出発点は、転生前に「大好きな人」に殺されたというカノンの記憶です。我儘だった己を反省し、今世では慎ましく生きるつもりだった。この「反省」と「慎ましさ」という自己規定が、物語の最初の心理的な枠組みになっています。ところが魔力の存在が露見し、魔術学園へ入学することになる。慎ましく生きるはずだった人間が、否応なく表舞台へ引き出される。この落差が、後の展開を予感させる構造として効いています。
さらに、入学先で八百年前に自分を殺したアウグストと瓜二つの男と再会する。名前も同じ。けれど相手にカノンの記憶はない。ここで読者は、カノンだけが過去を抱えているという非対称な関係性に気づきます。一方が記憶を持ち、一方が持たない。この非対称が、二人の距離の取り方を複雑にしていく。殺した側と殺された側という重い過去が、片方にしか存在しないという設定は、心理描写の焦点をどこに置くかを明確に示しています。
並行して学園では『人狼』が侵入し、学生たちを恐怖と疑心暗鬼に陥れている。人から人に取り憑いてなりすます悪霊という設定は、疑いが人間関係そのものを蝕んでいく構造を生みます。そして偶然学生が殺された場面に遭遇したカノンが人狼の疑いをかけられ、学園主席であるアウグストの部屋に匿われる。疑いと保護が同時に成立する状況で、二人の関係が否応なく近接していく流れになっています。
Q. カノンはなぜ「慎ましく生きる」ことを目標にしていたのですか?
A. あらすじによれば、転生前に大好きな人へ殺されるという出来事があり、その原因が己の我儘にあったとカノン自身が反省しているためです。前世での自分の在り方を省みて、今世では我儘を捨てて目立たず生きようと決めていた、という流れが読み取れます。ただし魔力の存在が露見したことで、その予定は早々に崩れることになります。
Q. アウグストはカノンのことを覚えていないのですか?
A. あらすじ上では、再会したアウグストは八百年前にカノンを殺した相手と名前も容姿もそっくりですが、カノンに関する記憶はないと記されています。つまりカノンだけが前世の記憶と殺された事実を保持している状態です。この記憶の非対称性が、再会後の二人の関係を規定する大きな要素になっています。
Q. カノンがアウグストに匿われることになった経緯は?
A. 学園に侵入した人狼が学生を殺害し、その現場に偶然遭遇したカノンが、逆に人狼ではないかと疑いをかけられます。その状況下で、学園主席であるアウグストの部屋に匿われることになる、という流れです。疑いを晴らすためではなく、匿うという形で関係が始まる点が、物語の緊張感を生んでいます。





