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崖っぷちアイドルと、無口なガテン農家の「トロ甘」な距離感
地下アイドルとして青春を捧げ、それなりの人気も得ていた主人公。ところが心当たりのないスキャンダルでグループを追われ、ほとぼりが冷めるまで田舎の遠い親戚の家に預けられることになります。芸能の世界から一転、舞台は地方の暮らしへ。そこで出会うのが、あまり喋らないガテン系の男性・鐵さんです。
落ち込む主人公に対し、鐵さんは多くを語らず、ご飯を作り、そっと見守るという形で気遣いを示します。ここが実に大人の距離感なのよね。慰めの言葉を並べるのではなく、生活の手触りで支える。その不器用さと誠実さが、読み手の胸に静かに積もっていきます。
少しずつ元気を取り戻した主人公が恩返しに働こうと部屋を出た先で見たのは、タオル一枚の鐵さん。良い身体、整った顔、そして「抱かれたいかも」に至るまでの流れが、あまりにも自然で生々しい。一気に熱が上がった主人公は、お酒の力を借りて彼を誘います。最初は戸惑っていた鐵さんも、次第にその気になっていく。この「次第に」の温度差が、たまらなく愛おしいところです。
「終わったら早く寝ろよ…」——この距離の詰め方に痺れる
この二つの言葉の並びが、この作品の核心なのだと思います。主人公の「私はもう子供じゃないんです」は、慰められ守られるだけの存在ではないという宣言。一方の鐵さんの「終わったら早く寝ろよ…」は、突き放しているようでいて、実は相手を気遣い、距離を保とうとしている言葉です。
この二つが噛み合ったとき、無口な男の不器用な優しさと、傷ついた女性のしたたかさが交差する。誘う側と誘われる側の立場が、静かに、けれど確実に入れ替わっていく。あらすじの時点でその予感が漂っているのよね。派手な告白ではなく、生活の延長線上に恋が立ち上がってくる。その手触りが、大人の読者にはたまらないのです。





