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発売日: 2026/10/13 | 著者: muku / 條
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食べられると思われてる……。この時点で関係性のベクトルがもう歪んでて最高。怯えながら懐いていく過程、じっくり見たい。
「食べられる」と怯える王子と、猫を溺愛する竜帝のすれ違い
本作の軸は、迫害されてきた猫の国の第五王子ミカと、彼を助け出した竜帝セライナの関係です。ミカは片目の色が違うことで兄達から恐れられ、戦勝国である鼠の国に差し出され囚われていました。そんな彼をセライナが助け出し、竜族が住む空の島での生活が始まります。
物語を特徴づけるのは、ミカが「自分はセライナの餌として連れてこられた」と信じ込んでいる点です。猫大好きな竜族達にちやほやされながらも、食べられまいと奮闘するミカ。しかし竜帝の高潔さや優しさに触れるうち、いつしか「彼になら食べられてもいい」とまで思い始めます。恐怖から信頼へ、そして別の感情へと移り変わっていく心の動きが、誤解を抱えたまま進むすれ違いとして描かれます。
「食べられてもいい」に辿り着くまでの距離が、たぶんこの話の全部。恐怖が愛情に上書きされる瞬間、丁寧に描かれてそうで怖い。いい意味で。
身分差と種族差が重なる関係性
ミカは迫害された第五王子であり、捕虜という立場から竜帝セライナに助け出された身です。一方のセライナは竜族の頂点に立つ帝。助け出した側と助けられた側、守られる側と守る側という構図に、猫と竜という種族の違いが重なります。この立場の非対称性が、ミカの「餌にされるのでは」という誤解を生む土壌になっています。
空の島で竜族達にちやほやされるという周囲の反応も、ミカの孤立した心情との対比として効いています。猫の国で恐れられていた王子が、見知らぬ土地で初めて歓迎される。その落差と、それでも拭えない警戒心。関係が変わるにつれて、ミカの見方も少しずつ塗り替わっていくのでしょう。
迫害されて育った子が、自分に向けられる好意を素直に受け取れないの、すごくわかる。セライナの高潔さが、ミカの防御をどう剥がしていくのか。そこが読みどころ。
こんな人に向く作品
- 誤解やすれ違いが、じれったくも愛おしいと感じる方
- 守られる側が、守る側へと心を寄せていく過程を追いたい方
- ファンタジー世界の身分差・種族差を絡めた関係性が好きな方
「食べられたい」という感情が、恐怖から始まって愛情へと着地するまでを、じっくり追いかけたい作品です。すれ違いが解けた先にどうなるのか、見届けたくなる一冊です。





