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▶ 『蔵書票を一枚だけ頼むはずが彫師に『あなたの票が刷り上がるまで』と工房の奥へ座らされ呼び方が変わった一語で崩れて毎晩あまやかに種付けされてる♡♡♡』の試し読み・お得なセール状況をチェック!
「一枚だけ」が八年続く——彫られて、刷られない版木たち
町の私設図書室で司書をしている米原いろは(30歳)は、寄贈本に貼る蔵書票を一枚だけ彫ってほしいと工房を訪ねます。それが八年前。彫師の衣笠駿(39歳)は、木口の柘植に髪より細い線を入れていく人です。今度こそ一枚で終わるはずが、「色が決まらない」「線がまだ甘い」「紙が刷りに負ける」——理由はいつも彼が出す。試し刷りを重ねるあいだ、いろはは彫台の脇の椅子で待つのが習いになった、という導入です。
この作品を他と分けるのは、遅延の理由がすべて彫師の側から差し出される構図と、その遅延が八年という長さに積み上がっている点にあります。そして棚の戸を開けたとき、いろはは見てしまう。彼女がよかったと言った本、その一冊ずつの図案が、刷られないまま彫ってある版木として立てて並んでいるのです。八年ぶん。声だけが先に工房の奥から届き、彼女はこの人を名前で呼んだことがなく、彼は彼女を名字でしか呼ばなかった——その呼称の非対称が、物語の軸として置かれています。
呼び方が変わる一夜——崩れるのはどちらか
ある夜、いろはのほうが先に呼び方を変えます。名前を一度呼んだだけで、崩れたのは駿のほうでした。以降は彫台の脇でも、刷りの台に凭れたままでも、毎晩という関係が続いていくとあらすじに記されています。主導権が一度だけ静かに入れ替わるこの場面が、八年間の「待つ」関係の答え合わせとして機能しそうです。
最後の一枚が刷り上がった朝、駿は票をいろはに差し出します。彼女は受け取らずに、彼の名を入れた版木を自分の手で起こして刷り、乾いた一枚に糊を引いて彼の本の見返しに貼りつける。職名でしか呼ばれなかった彫師と名字でしか呼ばなかった司書が、作品そのものを介して互いの名を残し合う結びになっています。
この作品が合いそうな人
- 長い時間をかけて積み上がる執着を、静かな熱量で読みたい人
- 年の差のある大人同士の関係を、職名と名字という距離感から味わいたい人
- 「待つ」側と「引き延ばす」側の力関係が、一夜を境に揺れる瞬間を拾いたい人
- 結末で、言葉ではなく手仕事として気持ちが差し出される形に惹かれる人
全62ページ、R18作品で、性描写は成人同士の合意ある関係として描かれています。甘さの下に八年ぶんの執着が沈んでいるタイプの物語を、落ち着いた温度で読みたいときに手に取りたい一冊です。
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