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📝 DLsite TL小説
十五歳下の蒔絵師が「先輩」と呼ぶ、五年越しの距離
本作は、木地師の桑島榧(39歳)と、十五歳下の蒔絵師・幸阪漱(24歳)の関係を描くTL小説です。きっかけは五年前。十九歳で入って間もない漱が文様をしくじり、納めを止めた場面にあります。詫びに行く者がいなくて、榧が木地ごと抱えて一緒に頭を下げた。それ以来、漱は榧を「先輩」と呼び続けています。
この「先輩」という呼び方が、物語の軸になっています。職人としての上下でも、恋愛の進展でもなく、五年前の失敗を一緒に背負った日の記憶がそのまま呼び名に残っている。年の差を単なる属性で終わらせず、過去の一件と結びつけて関係を立ち上げている点が、本作を他と分ける特徴です。
梅雨の漆室という、逃げ場のない待ち時間
漆は乾くまで何もできない、待つ仕事です。梅雨は漆が乾くのにいちばん都合のいい季節で、漱は湿りを保った室の戸の前に座り込んで待つ時間が長くなります。榧は挽き直しの木地を納めるために夜の工房へ通い、雨の匂いに生漆の匂いが混じる路地を、戸の隙間から漏れる灯りのところまで歩くのが毎晩の道順になりました。
待つしかない時間、密室に近い室の前。この舞台設定が、ふたりの距離を縮める装置として機能します。漱は乾きを待つあいだ手を遊ばせない男で、筆を置いた指で榧の手首の内側に触れる。「考える前に動いてますよ」と言われたとき、榧の腰はもう迎えに出ていて、自分が動いたことを後から知る——あらすじではそう描かれます。
先に手を離すのは、いつも彼のほう
漱はいつも先に手を離します。榧は挽いた木地を棚に戻し、それからまた室の前に戻る。乾きを待つ晩が続くあいだ、榧は毎晩そこに残ります。そして納めの朝、榧は挽きかけの木地をもう一度回す——あらすじはこの場面で締めくくられます。
触れるのは漱から、離れるのも漱から。主導権が一貫して年下の側にある構図が、あらすじから読み取れます。一方で榧は、木地の肉厚は指の腹だけで決められるのに、自分の間が悪いことには気づかないと紹介される人物です。仕事の勘は鋭いのに、自分の心の機微には钝い。その落差が、年上ヒロインの魅力として置かれています。
こんな読者に合いそう
- 年の差もの、とくに年下攻めの関係性を読みたい方
- 職人同士の、仕事と感情が切り離せない距離感が好きな方
- 言葉より先に身体が動く、静かな熱量のやり取りを味わいたい方
- 梅雨の夜、密室に近い空間の空気ごと物語に浸りたい方
全56ページのR18作品で、登場人物はどちらも成人を何年も過ぎています。あらすじにあるとおり、ふたりの関係は「先輩」という呼び名と、五年前の共同の謝罪から始まります。甘さよりも、待つ時間の張り詰めた空気を拾いたい夜に向く一冊です。
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