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告白とキスが、ずっと変わらなかった三人の時間を静かに揺らしはじめる――
本作『キスのむこう』の主人公・桐緒は、幼馴染である栄太に片思いをしてきた。だが栄太に恋人ができたことでその想いは叶わず、桐緒は心の傷がいえない日々を過ごしている。幼馴染でずっと仲良しの三人だからこそ、栄太の恋人の存在は一層、桐緒の心を追い詰めていく。
そんなある日、同じく栄太のことが好きだと思っていたもう一人の幼馴染・史朗が、桐緒に衝撃の告白をする。それは栄太への想いではなく、桐緒自身への想い。さらにその言葉に続くように、史朗は桐緒にキスを落としてしまう。親友だったはずの関係が、その瞬間を境に張り詰めた空気へと変わりゆく。
キスを境に、桐緒の中で史朗の存在が意識されはじめる。それまで気にも留めなかった視線の熱や仕草のひとつひとつが、日に日に色を帯びて映るのだ。栄太への失恋と、史朗からの想い。ふたつの感情が交錯するなかで、三人の関係は少しずつ、しかし確実に変わっていく。
失恋の傷痕に、新しい感情が注ぎ込まれる繊細な心理描写
失恋したばかりの桐緒にとって、史朗の告白はあまりにも予想外の出来事だ。栄太への想いを引きずる心のなかで、史朗の言葉と唇の温度が繰り返し反響する。傷が癒えないままに新しい感情が芽生えはじめるその過程は、まさに青春の苦さと甘さを凝縮したかのよう。想いを受け止めたくても、まだ心の整理がつかない桐緒の揺れる心情に、読者は強く引き込まれるだろう。
幼馴染という近さが、かえって関係を繊細に歪ませる緊張感
幼い頃から一緒に育った幼馴染であるからこそ、三人の関係性はどこまでも近く、そして壊れやすい。史朗の告白によって、それまでの気安い関係は一瞬で歪み、交わす言葉のひとつひとつに意味が宿りはじめる。桐緒と史朗の距離は近いのに、心の距離は複雑に絡み合う。親しさの裏側に潜んでいた感情が表面化する瞬間の、なんと繊細で甘やかなことか。
