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発売日: 2026/09/11 | 著者: 沙野風結子 / m:m
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「人工知能は不遇な恋の夢を見るか」……タイトルだけで既に重い。犯罪者の刻印、削除された記憶、そして雇ってくれたのが振った相手。設定の時点で逃げ場がない。
記憶を消された男と、かつて振った親友が再会するまで
重罪を犯した者は動機も原因も記憶も全て脳から削除され、強制的に社会復帰する。人工知能に管理された社会が舞台です。犯罪者の刻印を刻まれた利絃は、エリート人生が一変するほどの何かを、自分でも分からないまま背負っています。ある日、働き口もろくにない利絃を救ったのは高校時代の親友・衛也。両想いだと思っていたのに振られた、因縁の相手です。
衛也は「任せたい仕事がある」と言って利絃を雇います。なぜ振った相手を、なぜ今。削除された記憶の中にこそ、衛也が利絃を手放した理由と、雇うに至った動機が眠っているはずです。人工知能が管理する社会という設定と、消された記憶という仕掛けが、恋の不遇さに直結しています。
記憶を消されているのに、雇う側は全部覚えている。この非対称だけで喉が渇く。利絃は自分が何をしたか知らないまま、衛也の隣で働くことになる。
削除された記憶が、関係性の重さを担保している
利絃は自分の罪を知りません。動機も原因も消えている。つまり読者は、利絃が知らない「衛也を振った側の事情」と「罪の輪郭」を、衛也の言動から拾い上げていくことになります。振った側の衛也が、刻印を刻まれた利絃をわざわざ雇う。この行動の裏に何があるのか。記憶が欠落しているからこそ、現在進行形の関係の重さが際立ちます。
振った相手を雇う、衛也の動機の読めなさ
高校時代に両想いだったはずの相手を振り、時を経て救い、仕事を与える。衛也の行動は一貫しているようでいて、その動機が一切見えません。同情なら雇う必要はない。罪悪感なら近づかないはずです。それでも衛也は利絃を手元に置く。執着なのか、責任なのか、それとも別の感情なのか。年下攻めかどうかは明示されていませんが、主導権を握る衛也の側から漂う気配がもう重い。
「両想いだと思っていたのに振られた」——この一文が全て。利絃の認識と事実がズレている可能性しかない。衛也が何を抱えて振ったのか、そこに触れた瞬間の利絃の反応が怖いし、読みたい。ハッピーエンドでしか許さない。





