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「君の笑顔が頭に焼き付いて離れなかった」から始まる、献身とすれ違いの物語
将来の騎士団長候補であるルーヴェルは、植物学者エルンを守った際に魔獣化してしまう。かつて彼を慕っていた者たちは態度を変え、両親や恋人までもが遠ざける中、片思いをしていたエルンが「私がこの人生をかけてでも、絶対に元の状態に戻してみせます」と名乗り出る。この言葉をきっかけに二人は契約結婚をし、五年間の共同生活が始まる。
そして人間に戻ったルーヴェルを祝うパーティーを最後に、エルンは離婚届を置いて姿を消してしまう。残されたルーヴェルは「君を攫いに行こうかとすら考えた」という重い感情を抱えながら、失ったものの大きさに気づいていく。契約という形で始まった関係が、いつしか別の色を帯びていたことに、彼はようやく辿り着くのだ。
「契約結婚」という檻の中で育まれた、一途な献身愛
エルンはルーヴェルへの片思いを抱えたまま、彼を救うために契約結婚を申し出る。この設定がまず秀逸だ。恋心と使命感が混ざり合った彼の心理は、複雑な糸のように絡まり合っている。契約という形を取ることで自分の感情を正当化しつつ、五年間も隣で支え続ける一途さが、物語全体に静かな緊張感を与えている。
一方のルーヴェルも、魔獣化という絶望的な状況の中でエルンの申し出を受けるしかなかった。立場を失い、見捨てられた彼にとって、エルンの存在は唯一の光だったはずだ。しかし契約という関係性に甘んじていたことが、後々の「重い感情」への伏線として効いてくる。献身と対価の曖昧な境界線が、二人の関係を複雑に揺らめかせる。
「離婚届を置いて姿を消して」から始まる、気づきの物語
物語の転機は、エルンが離婚届を置いて姿を消すところにある。五年間の献身を報われた後に完結させ、綺麗に身を引くという行為は、彼の一途さと誠実さを象徴している。しかし、残されたルーヴェルにとっては、失ってから初めて気づく感情が襲いかかる。「君を攫いに行こうかとすら考えた」という言葉には、契約から情愛へと変化した感情の重さが滲んでいる。
この構造は、契約という仮面を剥がした先に本心が現れるという、心理描写の妙だ。五年間の共同生活が積み重ねた行間が、ルーヴェルの「重い感情」にリアリティを与えている。一途な献身と、それに気づかない鈍感さ。その不均衡が生む切なさが、読者の心を掴んで離さない。
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