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「選択」としての責め苦――明るさと残酷が同居する異色の構造
本作は、記憶を消され「ポチ」と名付けられた主人公が、二人の男によって「耐久実験」と称した様々な行為を受けていく物語。しかし悲壮感は一切なく、むしろ会話は軽妙で、全体がハッピーエンドへと向かう構成になっている。
あらすじで特に興味深いのは、トラック4Aと4Bが選択式になっている点だ。くすぐり責め中心の快楽路線か、骨折や爪はぎといった明確な痛み路線か。これは視聴者が「どの苦痛を受け取るかを選ぶ」という物語のテーマを、構造ごと体感できる仕掛けになっている。
さらに「プレイ自体はM向けですが、ストーリーは明るく悲壮感のないハピエン」という明言は、このジャンルにおいて非常に稀有な立ち位置だ。可哀そうな展開に興奮できない、でも単なる溺愛では物足りない――そんな複雑な欲求に応えるため、徹底的に「明るさ」が担保されているらしい。
「名前すら持たない」存在に与えられるもの
登場人物は、記憶を消された主人公と、彼女を「実験体」と呼ぶ二人の男。一人は「俺殴る相手のこと結構詳しく知りたいタイプ」と発言するラフな男、もう一人は「記憶はデリートされており」と事務的な口調で説明する男。この対照的な性格が、作品全体の空気を作っている。
二人は主人公に「ポチ」という名前を与え、生活を共にし、笑い、会話し、苦痛を与える。この「名前を与える」という行為が象徴的だ。記憶も名前もない存在に、彼らなりの方法で「関係性」を築こうとしているように読めるのだが、それが同時に「実験体」という呼称と同居しているのが、この作品の歪で魅力的な核になっている。
また、あらすじには「これはどの苦痛を受け取るかを、あなたが選ぶ物語」とある。つまり主人公は一方的な被害者ではなく、選択する主体として物語に参与している。この構造が、単なる凌辱ものではない本作の独自性を生み出しているのだろう。
「名前」という枷と、その先にある自由
この短いセリフが、本作の全てを象徴している。冒頭で名前を与えられ、ポチとして生活を共にし、様々な実験を経て、最終的に戻ってくる場所が「識別番号」なのだ。
しかし、これは後退ではない。むしろ、名前を名乗る必要がないほど関係性が確立された証とも読める。名前は他人に呼ばれるためにあるものだが、識別番号はシステム上の記号に過ぎない。つまり、彼らの間では「ポチ」という名前すら、もう必要ないほどの信頼(あるいは歪な愛着)が形成された可能性がある。
トラック8で「記憶、戻してみましょうか」という提案があり、トラック9でこのセリフに至る。記憶が戻るかもしれない状況で、それでも「ポチ」でいることを選ぶのか、それとも別の選択をするのか。あらすじだけでは真相はわからないが、この結末の意味深さが、物語全体の余韻を決定づけている。
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