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「落とし物、財布のほかにもう一個あるんです」——交番から始まる、ハロウィンの夜の物語
本作は、ハロウィンの夜を舞台にしたBL小説です。大学四年の翠が、ゼミの打ち上げで決まった吸血鬼の仮装のまま、なくした財布を求めて駅前の交番に駆けこむところから物語が動き出します。マントの下はカントボーイ。応対したのは、無口で腕の太いお巡りさん・武尊でした。
物語を他と分けるのは、この「交番」という閉じた場所と、仮装という一夜限りの装いが組み合わさっている点です。翠は武尊に両手を上げてポケットを確かめられるうち、股のつけ根で指を止められてしまいます。そこには、あるはずのふくらみが無かった——という導入から、二人の距離は一気に近づいていきます。
先輩と後輩、二人のお巡りさんが交わす「番」
翠と武尊のやりとりは、交番の奥の休憩室へと移ります。首すじを噛まれ、垂らした唾まで飲みほされる。鍵を落としたゾンビメイクの女性が訪ねてくれば、ロッカーの陰に隠され、密着したまま指で責められる。腕を背中で「確保」されたまま背中から貫かれ、中出しされたところへ、巡回から戻ってきたのが、しゃべりの止まらない後輩・湊です。
「次、俺の番ってことでいいっすかね?」——この一言で、物語は武尊から湊へと受け渡されます。事務机のふちで向かいあい、片脚を抱えあげられて、もう一度奥まで注ぎこまれる。無口な先輩と、よく喋る後輩。対照的な二人のお巡りさんに、翠は交代で「取り調べ」を受けることになるわけです。
仮装と「確保」が彩る、一夜の濃密な時間
吸血鬼の仮装、ゾンビメイクの来訪者、背中での「確保」。ハロウィンという非日常の空気と、交番という日常の象徴が重なることで、翠の置かれた状況は独特の緊張感を帯びます。誰かが来るたびに隠され、密着を強いられる——そのたびに二人の距離は否応なく縮まっていきます。
翠をめぐるのは、無口で腕の太い武尊と、しゃべりの止まらない湊。性格も語り口も異なる二人が、それぞれのやり方で翠に迫る構成は、関係性の変化や重さをじっくり味わいたい読者に向いています。カントボーイという設定と、ハロウィンの仮装が重なる一夜の物語として、続きが気になる導入です。
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