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片想いだと思っていたのは、自分だけだった——勘違いから始まる、ズレた二人の恋
会社近くの人気パン屋「ミズノパン」。その店長・水野に一目惚れした営業職の沢渡は、184cmある自分よりもさらに背が高い190cmの水野に「推し活」のつもりで通い続ける。顔がいい。優しい。パンもうまい。何もかもが理想そのもの。だが、水野が男性を恋愛対象にしているかすら分からない以上、告白して今の関係を壊すよりは、このまま眺めていられればいい——そう割り切っていた。
ところがある日、買ったパンの袋から出てきたのは水野の個人的な連絡先だった。そこから二人はとんとん拍子に飲みに行くことになり、沢渡が長年妄想していた展開が、まさかの現実となる。夢のような一夜を過ごした沢渡は「これ以上望むのは贅沢だ」と綺麗に思い出にして帰ろうとするのだが、水野の方は「沢渡さん、どこ行くの?」と、なぜか様子がおかしい。
一晩限りのつもりだった沢渡と、最初から付き合い始めたつもりの水野。片想いだと思っていたのは、沢渡だけだった——という構図がすでに面白い。天然人たらしなパン屋店長と、恋愛だけは妙に慎重な常連リーマン。ちょっとズレた二人の、勘違いから始まるBLラブコメディだ。
キャラクターの魅力と関係性
沢渡は31歳、185cmの営業職。自分より背の高い男がタイプでありながら、自身が184cmあるせいで理想の相手になかなか出会えずにいた。そんな中で現れた190cmの水野に一目惚れし、相手の恋愛対象すら分からないため、告白せずに「推し活」として通い続ける。水野とのあれこれを妄想したことは数知れず、しかし実際に距離を詰められると「この人は誰にでもこうなんだ」と好意だけは頑なに受け取らない。
対する水野は31歳、190cmのパン屋店長。顔よし、スタイルよし、料理も接客も得意な天然人たらし。人から向けられる好意にはめざとく、「好き」と言われれば自分も好きになりがちな博愛主義もどき。来るもの拒まず去るもの追わずで、本人に悪気はないのに恋愛トラブルは多め。沢渡の好意にもとっくに気づいている。本人としてはごく自然に沢渡へ近づいたつもりなのだが——。
この二人の決定的な違いは、沢渡が「自分が一方的に片想いしている」と思い込んでいるのに対し、水野は「沢渡の好意に気づいた上で、自然に距離を詰めている」という認識のズレにある。片想いだと思っていたら相手も同じ気持ちだった、という展開は王道だが、水野の「天然人たらし」という性質がこの構図をより複雑にしている。本当に天然なのか、それとも計算なのか——あらすじからは判断できないが、その曖昧さが物語の魅力になりそうだ。
「推し」から始まる、理想の高さと距離感の話
沢渡の「推し活」というスタンスは、現実の恋愛に対して慎重になりすぎる性格の表れだろう。184cmある自分より高い男がタイプでありながら、なかなか出会えなかった理想の相手。そんな存在が現れたとき、告白して関係を壊すより「推し」として眺めていられればいい——という選択をするのが、恋愛に慎重な沢渡らしい。しかし、その「推し」から連絡先を渡され、妄想していた展開が現実になっても「これ以上望むのは贅沢だ」と綺麗に引いてしまうところに、彼の恋愛観の根深さが見える。この慎重さが、水野の「最初から付き合い始めたつもり」という認識とどう噛み合わないのか、そのズレが物語の軸になりそうだ。
天然人たらしの店長が仕掛ける、自然な距離の詰め方
水野は「来るもの拒まず去るもの追わず」でありながら、沢渡の好意に「とっくに気づいている」と明言されている。にもかかわらず、本人としては「ごく自然に」沢渡へ近づいたつもりだという。この「本人に悪意がない」というのがポイントで、人たらしの厄介さでもあり魅力でもある。連絡先をパンの袋に入れるという行動自体、かなり意図的であるにもかかわらず、本人は自然なつもりでやっている。この「天然」と「計算」の境界が曖昧なところが、水野というキャラクターの面白さだ。沢渡がいくら「この人は誰にでもこうなんだ」と距離を取ろうとしても、水野の側は「沢渡さん、どこ行くの?」と当然のように追いかけてくる。この温度差が、ラブコメとしての心地よさを生み出している。
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