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新約聖書の「あの弟子」をめぐる、小さな物語
本作は、新約聖書のヨハネ福音書に記された「イエスの胸でうたたねをつくほど親密な愛弟子」に着目したTL小説です。著者の中村竜也氏が、あとがきで自ら「伝統的なキリスト教の考えからすれば異端とも言える内容」と記しているとおり、聖書解釈の定説ではなく、ひとつの仮説から生まれた物語として提示されています。
あとがきによれば、ヨハネ福音書を書いたヨハネは十二弟子のヨハネとは別人ではないか、という説があるのだそう。最後の晩餐でイエスの胸に寄りかかり、大祭司に顔が利き、十字架の上から母マリアの後事を託された——そんな「少年」の愛弟子がいたのではないか。この仮説が物語の出発点になっています。
「少年」とイエスという関係性の構図
あらすじから読み取れるのは、少年の愛弟子とイエスとのあいだに描かれる、親密さと重い託しの物語だということです。最後の晩餐の場面で描かれるほど近い距離、そして十字架の上から母マリアの後事を託されるという別れの重さ。この二つが同じ人物に集まっている点が、本作の中心にある関係性の特徴です。
聖書の記述を下敷きにしながら、そこに「少年」という存在を仮定して物語を立ち上げている点が、他のTL作品とは異なる固有の設定といえます。歴史的な題材と、弟子と師という関係のあわいを、ひとつの物語として読む形になっています。
こんな読み手に届きそう
- 聖書や宗教画のモチーフを、物語として読み解くのが好きな方
- 弟子と師、あるいは守る者と託される者の関係に惹かれる方
- あとがきまで含めて、作者の仮説と物語の距離を味わいたい方
- 史実や定説を下敷きにした、少し背伸びした題材のTLを探している方
あとがきでは「ひとつのお話しとして読んでいただけましたら幸いです」と締められており、信仰や解釈を押し付けるのではなく、あくまで物語として届けたいという姿勢がうかがえます。表紙絵も著者自身によるものと記されています。
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