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▶ 『海霧で渡船が四晩出ないと言われた岬の鰹節の焙乾室で、十四歳上の焙乾職人に薪の匂いごと抱かれ奥に出されて孕んだ乾物屋の三代目の話』の試し読み・お得なセール状況をチェック!
海霧が閉じ込める四晩——乾物屋の三代目と焙乾職人のあいだに
本作は、乾物屋を継いで六年になる三代目・遊佐汀と、岬の鰹節工場で二十二年ものあいだ焙乾の火を落とさずに守ってきた職人・鰐渕卓治のあいだに生まれる物語です。汀は荒節を鼻で選んで仕入れてきた人物。渡船で工場へ渡った日に海霧が湾を塞ぎ、視界が戻るのは四晩あとだと言われます。この「四晩」という区切りが、物語全体の時間軸になっています。
工場に残っていたのは卓治ひとり。霧の日も火を落とさないという彼の仕事につきあううち、汀は焙乾室の隣で四晩を過ごすことになります。年齢差は十四歳。二十九歳の汀と四十三歳の卓治という、落ち着いた年齢どうしの歳の差である点も、本作の関係性を特徴づけています。
燻しの匂いが「自分の匂い」と混ざっていく過程
あらすじで印象的なのは、匂いの描写です。燻しの匂いは髪と腕に残って落ちず、三晩目には自分の匂いとの境が分からなくなった、とあります。卓治の手が触れた場所だけ匂いが濃く残り、離れたあとに肌が思い出して熱くなる——という表現からは、身体の接触そのものよりも、その後に残る感覚を軸にした描写がなされそうだと読めます。
四晩目、汀は自分から室の戸を閉めます。何が起きたかは誰も口にせず、籠に並べ替えられた節と、火床に足される薪だけが増えていく。出来事を直接語らず、物と手仕事の変化で時間を刻む構成になっている点が、本作の空気を伝える手がかりになっています。
霧が抜けたあとに残るもの——店の帳場へ持ち帰られる関係
物語は霧が抜けた朝へと続きます。卓治は渡船の桟橋まで節の箱を担いで下り、来月の分はこちらから運ぶと言います。そして店の帳場の奥、荒節の籠の隣には、一本だけ別に取り分けた節と、産科の予約票が置かれます。霧の四晩が閉じた空間で完結せず、日常の商いの場へと持ち帰られていく構成が、本作の読みどころのひとつです。
卓治には、節を分ける相手も褥をともにする相手も成人に限るという了解があると示されています。全58ページのR18作品で、登場人物・場所・焙乾や渡船の運用はすべて架空のものと明記されています。閉ざされた土地と手仕事の匂いをまとった歳の差の物語を読みたい方に向く一冊です。
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