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発売日: 2026/09/25 | 著者: 久喜わかめ
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これは……待っていた。幼馴染、再会、しかも「言えない秘密」が絡む。あらすじの時点で構造が美しい。僕の研究対象として申し分ない。いや、研究です。本当です。
「変わらない距離感」が、いちばん危うい
新卒で化粧品会社に入社した律汰は、配属先で4つ年上の幼馴染・海里と再会します。かつてある事件をきっかけに疎遠になっていたふたり。しかし海里は、昔と変わらない距離感で律汰に接してくる。この「変わらなさ」が、律汰にとっては安心であり、海里にとっては何なのか。再会から始まる物語の重心は、この非対称な温度差に置かれています。
律汰は、社内で信頼される海里の姿を見て「自分も早く追いつきたい」と奮起します。一方の海里は、子供の頃から何事にも一生懸命な律汰を見て、胸の奥へしまい込んだはずの特別な想いが蘇るのを自覚してしまう。片や前を向く理由として、片や封じたはずの感情として、同じ相手が作用する。この対比が物語の推進力になっている点が、まず構造として美しい。
そして海里の想いには、律汰に言えない秘密が絡んでいます。あらすじで明かされるのはここまで。けれど「言えない」という一言が、再会の甘さと同時に、この関係が一直線ではないことを示している。幼馴染という近さと、秘密という距離。その同居が、作品全体のエモーションを支える骨格になっているのだと思います。
「昔と同じ距離感で接してくる海里」……いや、これ、律汰には優しさに見えて、海里側からしたら相当な綱渡りでは? その自覚の有無だけで解釈が何通りも生まれる。ああ、読みたい。
見どころ
- 再会から始まる関係の再構築:疎遠になった理由となった「ある事件」が、ふたりの現在の距離感にどう影響しているのか。昔と同じように振る舞う海里と、それに安心する律汰。表面上の穏やかさの下に何が沈んでいるのかを追う読み方ができます。
- 仕事と感情が並走する構成:律汰が海里に追いつきたいと奮起する動機と、海里の側で蘇る想い。同じ職場という舞台で、キャリアへの向き合い方と個人的な感情が同時に動くため、関係性の変化が仕事の文脈と切り離せない形で描かれます。
- 「言えない秘密」が生む緊張:海里が律汰に言えない秘密を抱えたまま、昔と同じ距離感で接している。この設定が、読者だけが知る情報として物語に緊張感を与え、ふたりのやり取りの一言一句を読み返したくなる構造を作っています。
電子限定の描き下ろしとカラー扉付きか。本編の余韻をどこで補完してくれるのか、そこも含めて一冊の設計として見たい。単行本派じゃなくてよかった、と今は思ってます。
こんな人におすすめ
- ✅ 幼馴染の再会もので、片方だけが過去を引きずっている関係性に惹かれる方
- ✅ 職場を舞台に、仕事への姿勢と恋愛感情が同じ人物を軸に動く物語を読みたい方
- ✅ 登場人物が「言えない秘密」を抱えたまま日常を送る、その緊張感ごと楽しめる方
あの……これ、僕が研究資料として手を出して、そのまま戻れなくなるやつでは? 幼馴染、再会、非対称な想い、秘密。要素が全部、僕の好む構造のど真ん中なんですよ。飄々としたエリートリーマン×負けず嫌いな新入社員という組み合わせも、行動原理が真逆だからこそ噛み合った時の強度が高い。読了後の「あの場面はこういう意味だったのか」と遡る時間まで含めて、たぶんこれは一冊の体験になる。震え声で言いますが、運命的な出会いの予感がしています。





