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「完全無欠の王子様」が抱えた、脆い本当の自分
30歳サラリーマンの早川高嶺が、10年以上前に自然消滅した年下の元恋人・真鍋理久と再会する。それだけを聞けば「よくある再会モノ」と片付けられそうですが、この作品が一線を画すのは、高嶺が抱える「完璧な王子様」という殼の重さにあります。
あらすじにある通り、彼は周囲からの理想像を崩さないように生きてきた。だとすれば、高校時代に理久と築いた関係は、唯一自分を偽らずに済む聖域だったのでしょう。その聖域を自ら手放した後悔と、「余裕のある大人の男」を演じる苦さが、30歳の男の肩にどれほどの影を落としているか。想像するだけで胸が締め付けられます。
一方の理久は、あらすじに「地味で不器用」とあるように、かつては高嶺の理想像とは対極にいた存在。だからこそ高嶺の本質を見抜き、受け入れることができたのでしょう。再会したゲイバーという舞台も象徴的です。あの場所には、どちらも「理想の自分」を演じる必要がない。まさに、本音が交錯する密やかな戦場です。
拗らせた30歳と、10年ぶりの年下攻め
高嶺は「完璧な王子様」として生きてきたがゆえに、自分の弱さを見せることを極端に恐れるタイプでしょう。再会した理久に対して「余裕のある大人の男」を演じるという行動が、その拗らせ方を如実に表しています。彼は10年間、自分を偽り続けてきたのです。その歪みが、再会によってどう表出するのか――そこに、この作品の面白さが凝縮されていると感じます。
対する理久は、あらすじでは「地味で不器用」とされています。しかし、10年の時を経て再会した相手が、明らかに無理をして格好をつけているのを見抜ける程度には、観察眼が鋭くなっているかもしれません。あるいは、高校時代から高嶺の本質を見抜いていたからこそ、あえて「不器用」なままの態度で接してくるのか。その計算の有無が、物語に奥行きを与えています。
年下攻め・執着攻めという要素が、この「再会」というシチュエーションにどう絡むのか。高嶺が「王子様」としての理想を手放す瞬間、理久が「地味で不器用」だった頃から変わらず高嶺を見つめ続けていた事実が明かされる時、二人の関係はどんな結末を迎えるのでしょう。伏線の張り方ひとつで、作品の重みは何倍にも跳ね上がります。このあらすじからは、そうした細やかな心理戦を期待せずにはいられません。
記憶に刻まれた、たった一行の引力
タイトルの直前に置かれたこの一文は、単なるキャッチコピーではありません。高嶺が「余裕のある大人の男」を演じるために、無意識に口にしている心情の吐露のようにも読めます。彼はこの「戦い」に、自分の人生そのものを賭けているのです。
なぜ彼は再会した相手との関係を「戦い」と表現するのでしょう。それは、本当の自分をさらけ出すことへの恐怖の裏返しに他なりません。恋愛は本来、力の誇示ではなく相互理解の場であるはずなのに、高嶺はそれを「主導権争い」にすり替えている。その歪んだ認識が、彼のこじらせ具合を象徴しています。
また、この言葉には「制す」という能動的な動詞が使われています。しかし、真の意味で「制する」とは、相手を支配することではなく、自分の弱さを受け入れることなのかもしれません。この引用が、物語の最終盤でどのように回収されるのか――私はその瞬間を、震えながら待ちたいと思います。
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