📖 らぶカル BL漫画
名付けないまま、滲み出す——「極夜の筐」が静かに重い理由
「ああ、なんという、夜だろうか_____」という一節から始まる物語の舞台は、湖畔の冬と夏の東京。湖畔の古民家に暮らす年かさの研究者・正巳のもとへ、冬になるたび若い写真家・雅己が訪れる。亡き女性の面影を介して始まった関係は、いつしか擬似親子のような穏やかな形を保つようになっていた、という導入です。
けれど、その均衡は静かに揺らぎ始めます。雅己が向けるまなざしは敬慕や親愛では言い切れない熱を帯び、正巳もまたそれを拒みきれない。父性と恋情、保護と欲望が重なり合い、ほどけないまま積もっていき、やがて身体へと滲み出す。それでもふたりは明確な言葉を選ばない、という筋書きです。
踏み込めば壊れてしまうかもしれない関係を前に、曖昧なまま確かに近づいていく。雪に閉ざされた冬のなかで、名付けられない関係がどこへ行き着くのか。全200ページ、続編「湖岸のあなたに」の続きにあたる作品で、恋愛関係ではないと明記されている点も含めて、重心の置き方が独特です。
年かさの研究者・正巳と、冬ごとに訪れる写真家・雅己
正巳は湖畔の古民家に暮らす年かさの研究者。雅己は冬になるたびそこを訪れる若い写真家です。ふたりの間には亡き女性の面影があり、関係はその面影を介して始まりました。擬似親子のような穏やかさを保っていたのは、互いがその枠を必要としていたからだとも読めます。
変化するのは雅己のまなざしです。敬慕や親愛では言い切れない熱を帯びていく。受け取る側の正巳も、それを拒みきれない。拒まないことが、この作品では最も重い選択として描かれます。
言葉を選ばないまま、身体へと滲み出す
父性と恋情、保護と欲望。相反する感情が重なり合い、ほどけないまま積もっていき、やがて身体へと滲み出す。ここで交わされるのは告白ではなく、選ばれない言葉です。踏み込めば壊れるかもしれないという予感を抱えたまま、曖昧なまま確かに近づいていく。
耽美、頽廃、ストーリー重視という提示のとおり、感情の輪郭をなぞるのではなく、輪郭のぼやけたまま濃くなる関係を描く方向に振り切っています。全200ページという尺の使い方にも納得がいきます。




