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秘密を共有する二人の、逃げ場のない関係性
大学生のしずくは、ゲイ向けのオナニー配信をしている。活動名は『くらげ』。そんな彼が、ある日大学一のモテ男・新先輩に、配信用のえっちな下着を穿いて登校したことがバレてしまう。
パニックになるしずくをよそに、先輩が放ったのは「もしかして、くらげちゃん?」という言葉。なぜ先輩がその名を知っているのか。秘密を知る者と、秘密を暴かれた者の、対等でない関係がここから始まる。
この作品の核は、いわゆる「秘密共有」の構造だ。しずくは先輩に弱みを握られた形になるわけだが、先輩がなぜ配信を知っているのか、どこまで知っているのか。その情報量の差が、関係性の重さと不安定さを生み出す。タテ社会の上下関係に、秘密という不安定要素が加わることで、支配と被支配のバランスがどう転がっていくのか。そこが最大の見どころになると睨んでいる。
キャラクターの魅力と関係性
しずくは、臆病でありながら配信という行為に勤しむ大学生。日常では見せない自分と、配信の中の自分。その二面性が、「臆病くらげ」というタイトルに集約されている。臆病なくせに、人に見られることに興奮している。その矛盾が、彼のキャラクターの複雑さを生んでいる。
一方の新先輩は、大学一のモテ男。つまり、普段から人の注目を集める立ち位置にいる人間だ。そんな彼が、なぜ配信を見つけたのか。偶然なのか、それとも……。あらすじから読み取れるのは、彼がしずくの秘密を「知ってしまった」のではなく、何らかの形で「知るに至った」ということ。その過程に、彼の執着や関心の深さが滲んでいる可能性がある。
また、しずくの秘密が「配信」という、本来なら誰にも知られてはいけないタイプのものなのがポイントだ。この秘密が周囲に知られれば、しずくの大学生活は終わる。つまり新先輩は、しずくの人生を左右するカードを手にしている。その重さが、二人の関係の緊張感を一層高めている。
「くらげちゃん」という呼び方に宿る親密さ
新先輩がしずくを「くらげちゃん」と呼ぶのは、配信での活動名からだ。つまり彼は、しずくの「表の顔」ではなく「裏の顔」を知っている。この呼び方の変化が、二人の関係を象徴している。大学での先輩後輩ではなく、配信者と視聴者という、別の次元での繋がりが露見する瞬間。その衝撃が、物語の導入として非常に効果的だ。
しずくは先輩に「新先輩」として認識されていると思っていたのに、実際は「くらげちゃん」として見られていた。自分の認識と相手の認識のズレが、しずくのパニックを加速させる。この「呼び方」一つで、二人の距離感が一気に変わってしまうのが面白い。
配信用の下着という羞恥のアイテム
「配信用のえっちなパンツを穿いて登校した」という設定が、この作品の羞恥心を決定づけている。単に配信をバレるのではなく、その「配信用の下着」を身につけている状態でバレる。しかも相手は大学一のモテ男。つまり、最も見られたくない相手に、最も恥ずかしい格好を見られている。
このシチュエーションは、しずくの弱みを最大限に引き出す。下着という、普段は絶対に見せないもの。それを配信のためとはいえ身につけて、登校している。その行為自体が、彼の「内に秘めた欲望」を可視化している。そして、その可視化された欲望を、新先輩という他人が覗き見てしまった。この羞恥の構造が、物語全体のトーンを決定している。
この作品は、秘密と羞恥で構成された、関係性の重さを丁寧に描くタイプのBLだ。表と裏の顔を持つしずくが、新先輩という「裏の顔を知る存在」にどう向き合っていくのか。そして、新先輩がその秘密をどう利用し、あるいは守るのか。二人の駆け引きと、徐々に近づいていく距離感に注目してほしい。コミックス描き下ろしや電子限定の描き下ろしマンガも収録されているとのことなので、本編の行方も気になるが、その特典部分もお楽しみに。
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